百十一 激震
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胸元の鈴を改めて握り締めた。
つい寸前、ナルトに変化した人間を殺した凶器とは思えぬ鈴が、りん、と涼やかな音を立てる。
母の形見であるその鈴こそが、今の紫苑を支える力であり、同時にナルトとの約束が彼女を奮い立たせていた。
湖畔で交わしたナルトとの約束。『俺が守る』という彼の声が紫苑の耳元で反響する。
「本当だな、ナルト…」
信じて、いいんだな。
封印の祠。その前でわらわらと群がる幽霊軍団が、小さな人影を圧し潰さんと迫っていた。
巫女の命を狙う青銅の武人達は、その行く手を阻むようにして祠の入り口を守る存在を消そうと動く。それらの攻撃を尽く避け、一体の武人の肩に乗ったナルトは、不意に何処とも知れぬ方向へ視線を投げた。
瞬間、祠の前に満ちていた冷気が一気に濃くなる。
ピキピキ、と音を立てて祠の前の荒涼とした岩場が、瞬く間に氷原と化した。
地面に立っていた幽霊軍団達の足が一斉に凍りつく。身動き取れなくなった武人達の間を縫うように、誰かが俊敏な動きで駆け抜けた。
その存在が駆けた後ろで、青銅の石像がぐらりと傾く。足場を凍らされたそれらは為すすべもなく、その何者かの攻撃を受け、青銅の破片を撒き散らした。
「「お待たせしました」」
一人は冷気を纏い、一人は骨の刀を掲げ。
背中合わせで現れた二人の少年に、ナルトは笑みを浮かべた。
氷原を作った白と、幽霊軍団の兵を打ち砕いた君麻呂。
ナルトと紫苑に追いついた、白く儚い印象を醸し出す双方に、ナルトは軽く頷く。それだけで意思疎通を交わした二人は、ナルトに力強く頷き返した。
幽霊軍団の武人の肩を足場に、跳躍したナルトはそのまま空中でくるりと回転し、祠の前に張り巡らされた注連縄の上へ軽やかに降り立つ。祠の奥へ向かおうとするナルトを幽霊軍団はすぐさま追おうと動き出した。
その前に立ちはだかるのは、彼に付き従う二人の少年。
「ナルトくんの力になるのは僕だ」
「ナルト様をお守りするのは僕だ」
似通った宣告をすると、白と君麻呂はお互いに顔を見合わせて嫌そうな表情を浮かべた。即座に双方顔を背けるが、目的が同じである以上、仕方なく手を結ぶ。
封印の祠の前を埋め尽くす数多の兵を前にして、同一の主を守護する白の双璧は背中合わせに攻撃態勢を取った。
輿に乗せられ、肘置きにぐったりと身体を寄りかかっている黄泉の顔はとても青白かった。
虚ろな眼で此方の動向を眺めている男から、紫苑は慎重に距離を取る。若き巫女の警戒する様が面白かったのか、黄泉がク
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