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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百三十五話 辺境星域視察
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人はそれぞれ銀河帝国では有名な人物の末裔だ。一緒に付いてきた三人の官僚は顔が強張っている。

「彼女は私の副官を務めるフィッツシモンズ大佐です」
俺の言葉にヴァレリーが敬礼をしようとしたが、それを遮って彼らを紹介した。

「大佐、バルトバッフェル男爵は帝国と同盟が最初に接触した時、戦争に反対したバルトバッフェル侯爵を御先祖に持たれる方です。バルトバッフェル侯は当時の皇帝、フリードリヒ三世陛下の異母弟でイゼルローン要塞の建設を最初に唱えた方ですよ」

ヴァレリーが驚いたような視線を男爵に向けた。男爵は何処と無くくすぐったそうな表情をしている。
「昔の事だ、しかもそれが原因で侯爵から男爵に爵位を下げられ領地も削られた。今のバルトバッフェル男爵家は辺境の一男爵に過ぎん」

「そして、そのイゼルローン要塞を実際に作ったのがリューデリッツ伯爵の御先祖です。あの要塞が帝国にもたらした利益は大きい。防衛の拠点、そして中継基地として大きな役割を果たしました」

「その割には我が家は報われなかった、残念な事ではあるがね。元帥、あの要塞を帝国に取り戻す事は可能かな」
「国内が安定すれば可能です」

我が家は報われなかった、その言葉を出した時の伯爵はほんの少し悲しげだった。無理も無い、当時のリューデリッツ伯爵はイゼルローン要塞建設費超過の責任を問われて自殺した。

ドケチ皇帝、オトフリート五世は建設費が嵩むのが我慢できなかったらしい。馬鹿な話だ、俺ならイゼルローン要塞を作って防衛戦を展開し安全となった辺境星域を開発しただろう。長期的に見れば十分元が取れたはずだ。オトフリート五世は金を貯めるだけで使い方を知らなかった。ドケチと言われても仕方が無いだろう。それとも上品に守銭奴とでも言われたかったか……。

その後ミュンツァー男爵を紹介した。ミュンツァーの名前はヴァレリーも知っていた。まあ当然だろうな、名君マクシミリアン・ヨーゼフ二世の下で国内の改革を指導したミュンツァー司法尚書の名前は有名だ。

ミュンツァーがその気になればオーディンの近くで領地を貰う事も出来ただろう。だがミュンツァーは国内改革を行った所為で周囲から恨まれている事を理解していたようだ。

妬みを必要以上に買うことを恐れたミュンツァーは辺境に領地を貰った。ミュンツァーが司法尚書を辞任し引退した後ミュンツァー男爵家が中央で活躍する事は無かった。多分、警戒されたのだろう。

挨拶が終わりソファーに座って話し始めた。クラインゲルト子爵邸に何故バルトバッフェル男爵達がいるのかはすぐ分かった。彼らは一種の共同体を形成しているようだ。辺境の貧しい領地を領有している彼らは単独で領地を経営するより協力して経営するほうが効率が良いと判断したらしい。

具体的には輸送船、警戒部隊の共有
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