第二章
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「特に母親に、ベトナムの女性はです」
「強い」
「それも鬼の様に」
「だからですね」
「戦ってはいけないのですね」
「そう教えられてきましたので」
だからというのだ。
「これまでです」
「女の人とは喧嘩しなかった」
「そうなんですか」
「はい、しませんでした」
全く、とだ。ゴーは後輩達に話した。
「何しろ相手は寝ている時にです」
「そうそう、そうなんですよね」
「あの部分を切り取ってきますから」
「そうしたこともしますから」
「結構そうした話がありますからね」
「ベトナムではそうです」
喧嘩した相手、浮気した彼氏や亭主が寝ている間にだ。刃物を持って男の最も大事な部分を切り取る様なこともしてくるのだ。
この話を心底怯える顔でだ、ゴーは話すのだった。
「この話が一番怖かったです」
「そうですね」
「確かに怖いですね」
「そこまでしてきますから」
「ベトナムの女性は」
「ですからこれまでです」
本当にというのだ。
「しません」
「そうですね、わかりました」
「ゴーさんのお考えは」
「怖い位に」
「くれぐれもご注意を」
蒼白の顔で言うゴーだった。
「ベトナムの女性は」
「よくわかりました」
「猛女、烈女ばかりですから」
「注意していきます」
「自分自身の為にも」
大学生達も言う、ゴーはとにかくベトナムの女性は怒らせるなと説いて回っていた。それはレディーファーストの観点からではなかったが多くの者の共感を得ていた。
実際に彼は女性には暴力を振るわなかった、それが女性達には評判がよく。
やがて高校で教師をしている彼と同じ大学の同じ学部にいたユエ=ミル=ザッカにだ。彼が大学の助手に就職した時に声をかけられた。
「ねえ、よかったらね」
「よかったらって?」
「貴方が就職したらね」
つまり今の状況になればというのだ。
「声をかけようと思っていたけれど」
「それってまさか」
「プロポーズよ」
微笑んで彼に告げた、黒髪を長く伸ばした切れ長の目を持つ顔でだ。面長で肌は白い。唇は紅で鼻は高い。背は一五〇程度と小柄だが白のアオザイからスタイルがはっきりと出ている。胸が大きい。
「いいかしら」
「それじゃあ」
「ええ、返事は」
「僕でいいのかな」
「ずっとそう思っていたから」
だからだというのだ。
「待っていたのよ」
「そうなんだ」
「それじゃあ返事は」
「だから僕でよかったら」
こう返したゴーだった。
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