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作られた善行
第六章
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「前に話した居酒屋あっただろ」
「長男ご推薦の料理を看板にしてた店か」
「その長男の写真を実際に出してな」
「潰れたか?」
「いや、料理と酒自体はいいから普通に営業してるさ」
 潰れてはいないというのだ。
「ただ、長男はな」
「消えたか」
「そのご推薦のメニューもな」
「そうなったか」
「猿が人間様の飯食うなって思ったがな」
「そっちでも消えたんだな」
「ああ、そうなった」
 その居酒屋でもというのだ。
「晴れてな」
「それはいいことだな」
「しかし実際に品のない連中だったな」
「ああ、本当にな」
 正樹もそれは認めた。
「マスコミもあんな連中よく持て囃したな」
「視聴率稼ぎでもな」
「カリスマの一家だの今時珍しい一家団結とかな」
「偏向実況しまくってもな」
「作られた善行だのばっかりだったな」
「幾ら飾っても猿は猿なんだよ」
 品性、人格がというのだ。
「やがて素性がばれるんだよ」
「そいうものなんだな」
「いなくなってよかったさ」
 清々したといった顔だった。
「あんな連中を見なくて済むと思ってな」
「協会からも見離されたしな」
「ボクシング界からも追放だな」
「永久追放でいい」
 完全にというのだ。
「あんな連中がボクシングというかスポーツするな」
 チンピラに過ぎない連中がというのだ。
「そしてマスコミもあんな連中持ち上げるな」
「だから悪いんだな」
「そうだよ、持ち上げるにしても相手を選べよ」
「あんな一家を選ぶなか」
「ああ、後な」
 今も二人でテレビを観ている、バラエティ番組で元プロ野球選手球界の番長と呼ばれていたその者がへらへらと笑って画面にいた。
 その彼を観てだ、今度は正樹が言った。
「こいつも馬鹿だよな」
「引退してタレントになったか」
「コーチとかならないのかね」
「実績はあるけれどな」
 優樹もこのことは認めた、事実だからだ。
「名球会にも入って」
「タイトルは少ないけれど実際実績はあったな」
「ああ、けれどな」
「コーチ野話はないか」
「こいつどう観ても馬鹿だろ」
 画面に映る彼を指差してだ、優樹は正樹に言った。
「もっと言えばこいつもな」
「あの一家と一緒でか」
「馬鹿だろ、品性も教養もないな」
「番長ぶってるだけのか」
「野球理論なんか何もないな」
 実績はあるがだ。
「品性もないし人に教えられる奴じゃない」
「それならか」
「こいつもな」
 それこそというのだ。
「コーチになれるか」
「もっと言えば監督もだよな」
「ああ、絶対に無理だ」
 優樹は正樹に顔を向けて言い切った。
「こいつにそんな頭があるか」
「品もないしな」
「こいつも同じだよ」
「その一家とか」
「ああ、同じだよ」

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