第五章
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「今年でね」
「シーズン途中で」
「次は誰かな」
「藤田さんじゃないの?」
私は朝御飯の用意をしながら夫に返した。
「次期監督って噂もあったし」
「あの人かな」
「そうじゃないかしら」
「どうかな、しかし阪神もね」
「弱いわね」
「勝利は遠いよ」
項垂れた顔での言葉だった。
「どうにもね」
「そうよね」
「全く、阪神は」
くれぐれもとだ、夫はまた言った。
「頼りないよ」
「そうよね」
「ああ、子供達も嘆いてるね」
「昨日言ってたわ」
三人共だ、一番下の子はまだ五歳なのにもう阪神阪神言っている。どうも幼稚園の先生に教えてもらっているらしい。
「また負けたって」
「そういえば昨日も負けたか」
「これで三連敗ね」
「最下位かな」
「間違いないでしょ」
定位置になってきていた。
「これは」
「覚悟しようか」
「そうしましょう」
「縦縞が格好よく翻る日は何時かな」
「来ないかもね」
そうした日はとだ、私は諦めた声で言った。
「それは」
「そうだよね」
「そう、だからね」
それでというのだ。
「今から覚悟を決めましょう」
「まだ七月なのに」
「これはもうどうしようもないわ」
こうした話をした、朝から。それで私は子供達を起こして家族で朝御飯を食べたけれど子供達も阪神の負けについて言っていた。
夫は食べつつだ、こうも言った。
「まあ阪神は負けたけれど」
「負けたけれど?」
「今日は縁起を担ぐ為にストライプを食べようか」
「ああ、お好み焼きか焼きそばね」
「黒と黄色のストライプを食べようか」
「そうするのね」
「そうしようか」
こう白と青のストライプのシャツを着ている私に言った。
「今日は」
「じゃあそうしたらいいわ」
「この前食べたら阪神勝ったから」
「それじゃあね」
「そうしてみるよ」
「私も神社にお参りしようかしら」
言うまでもなく阪神が勝つことを願ってだ。
「そうしようかしら」
「いいと思うよ、じゃあ今日もね」
「頑張ってね」
「そうしてくるよ」
夫は黒と赤のストライプ模様のネクタイを締めてそのうえで会社に向かった、私は子供達も学校に送ってから神社に向かった。ストライプのチームの為にだ。気付けば私達はすっかり大阪のストライプに馴染んでいた。大阪に住んでいるうちに。
ストライプ 完
2016・5・24
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