第四章
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そのストライプについてだ、私は専業主婦として大阪の街を歩いたうえで夫に言った。
「予想通りね、ここは」
「虎模様ばかりだよ」
夫もこう私に言う。
「阪神タイガースだからね」
「本場だから」
「もう皆ストライプだよ」
「そうよね」
「阪神は嫌いじゃないけれど」
「あなたロッテファンだから」
野球では夫はストライプ好きじゃなくてこう言う、今もストライプのシャツを着ているにしても。
「そうよね」
「セリーグはあまり興味がないんだ」
現実として、というのだ。
「だからね」
「それでよね」
「こっちのストライプはね」
「馴染まない?」
「嫌いじゃないにしても」
それでもというのだ。
「野球では寂しいね」
「そもそもロッテもあれじゃない」
「ストライプじゃないよ、確かに」
「横浜もだけれどね」
あのダブルのマークの帽子は私のお気に入りであるけれど。
「それは」
「うん、ロッテが縦縞なら」
「いいのね」
「そうも思うよ」
これが夫の言葉だった。
「セ・リーグに興味がないとこっちの縦縞には馴染まないね」
「そういうものなのね」
「けれどね」
夫はここでこうも言った。
「ストライプは好きなままだし、それに」
「それに?」
「お好み焼きのストライプはいいね」
「ああ、あれね」
「ソースとマヨネーズのね」
これはいいというのだ。
「たこ焼きや焼きそばでもそうだけれど」
「こっち本当に粉もの美味しいわね」
「というか食べもの全体がね」
「安くて美味しいわね」
「いい街だね、本当に」
「ええ、東京から来たけれど」
それでもだ、私にしても。
「いい街ね」
「うん、ずっとここにいたい位にね」
「いい街よ、今度都島の方まで行ってくるわ」
住んでいる社宅があるのは此花で正反対の方向にあるけれどだ。
「そっちに行って来るわ」
「そうするのね」
「そうするわ」
こう言って実際に都島まで行った、途中使った阪神電車では勿論都島でも都島でも黒と黄色のストライプばかりだった。
そのストライプに苦笑いしつつ都島も楽しんで大阪のあちこちを専業主婦として歩き回わった、そうして楽しんでいると。
二年三年と経って夫との間に男の子が出来た、そして次は女の子その次はまた女の子が生まれて十年経った。
私も夫も完全に大阪に馴染んだ、それでだ。
夫は朝に新聞、ディリースポーツを読みつつ苦い顔で言った。
「昨日も一点差でね」
「負けたのね」
「全く、毎試合毎試合ね」
「阪神はそんな点差で負けるわね」
「全くだよ」
ここに来てすぐに日本一になったけれどそれはもう大昔でだ、今の阪神たるや。
「打線は打たないし」
「ピッチャーが抑えてもね」
「得点が入らないか
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