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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百三十四話 捕虜交換後(その2)
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独裁者になると。だから何処かで自分を止めて欲しいと思った。首相と国家元首を兼ねたのも、終身執政官になったのも、皇帝になったのも、何処かで銀河連邦市民が自分を止めてくれる事を期待したからではなかったか、ところが連邦市民はそれを許してしまった……』
またトリューニヒト議長が笑った。

『呆れただろうね、連邦市民を軽蔑しただろう。彼は自分が神聖不可侵だと思ったのではない、連邦市民を馬鹿だと軽蔑しただけだ』
どう考えれば良いのだろう、トリューニヒト議長は市民とは無責任で愚かだと言っているのだろうか、それとも単純に自分の思ったことを言っているだけなのか……。

「劣悪遺伝子排除法もそれが原因だとお考えですか?」
『そうだ、権力者というのは自己を神聖視していれば自分を讃えるだけだ。相手を軽蔑しているからあんな悪法を発布する。軽蔑していなければあんな悪法は生まれてこない……』
「……」

『それに、あの法はどちらかと言えば政治的な意味があって発布されたと私は考えている』
「というと」

『帝政に反対する人間をあぶり出し、抹殺するためだ。社会秩序維持局が設立され政治犯に対して猛威を発揮するのはあの法が発布された後だ。ルドルフは連邦市民を軽蔑した。彼らに民主主義など相応しくないと考えた。だから民主共和制を信奉する人間達を弾圧した……』
「……」

自己を神聖視するからではなく、市民を蔑視するから、民主制を運用できないと考えたから劣悪遺伝子排除法が生まれた……。そんな事が有るのだろうか?
『ルドルフ自身、あの法が馬鹿げたものだとは分かっていただろう。彼の息子は先天的な白痴だったそうだからね』

「しかしルドルフはあの法を廃法にしていません。馬鹿げたものだと思っていたのなら何故廃法にしなかったのです。議長の仰る事は辻褄が合いませんが」
私の反問にトリューニヒト議長は一つ頷いた。

『後継者のためさ。先代の非を改める事ほど後継者への信望を集める手段は無い。帝政を磐石ならしめるためルドルフは敢えて厳しい顔を見せた。温容は後継者が見せれば良い、違うかな?』
「……」

『残念な事にルドルフの死後、帝国では反乱が起きた。その所為で帝国の後継者は温容を見せる事が出来なくなった。劣悪遺伝子排除法も社会秩序維持局も存続し続けた……。もし、あの反乱が無ければ帝国はもっと違った歴史を歩んだかもしれない。自由惑星同盟も無かったかもしれない……』

トリューニヒト議長は沈鬱な表情をしている。本当にそう思っているのだろうか? 一理有る事は認めざるを得ないがルドルフを認める? 納得がいかなかった。大体ルドルフは間違いなく自己を神聖視していた。

「しかし、彼が自分を神聖視していたのは間違いないでしょう。例の度量衡のことも有りますし……」
『クレー
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