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提督はBarにいる。
提督VS木曾
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樹に捉われては森が見えん。何かにとらわれる事なく、全体を見る……これが極意だ」

 提督の例え話は解り難い所があるが、実はこれは最新の科学でも実証されたモノであるのだ。目の前で素早く動く物を目で捉えようとして追うと、動体視力が物体のスピードに追い付けずに見失ってしまう。しかし、全体をぼやっと1つの画像であるように捉えると、動き出した物体の軌跡を目で追う事が出来るというのだ。これはスポーツの世界でも常々言われている事であり、剣道では『遠山の目付け』という教えがある。剣先に視線を集中させず、遠くの山を見るようにぼやっと全体像を見る事で、相手の動きを目で追って反応出来るらしい。これは科学的にいう所の『周辺視』という物で、気になる人は調べてみると中々興味深い。反応速度で劣るであろう提督が艦娘達を圧倒している理由の1つである。周辺視で動きを捉えてそれに対応しているのだ。




 振り下ろし、突きを放ち、横薙ぎに払う。流れるようなコンビネーションで連続した攻撃を放つ木曾。その動きに淀みは無く、だが提督はひょいひょいと踊るように躱していく。逆に提督は最初の鍔迫り合い以後刀を鞘に納め、さながら木刀のように木曾の身体を打ってくる。手抜きなのかそれとも何かの策なのか、大したダメージは無いがほぼ全てが被弾する。何度かは偶然軍刀を構えていた位置が良くて弾く事が出来たが、此方の攻撃が当たらず彼方の攻撃が当たるという状況は体力的にも精神的にも焦れてくる。

「クソッ!」

 何度目かの袈裟懸けを躱され、木曾が悪態を吐く。

「どうした、そろそろ諦めるか?」

 提督は息が上がった様子も無く、ケラケラと笑っている。まぁ、あれだけの嫁艦を相手にしているのだからスタミナは化け物級ではあろうが。何故自分の攻撃だけが当たらず、提督の攻撃だけが当たるのか。

「……攻撃が真っ当過ぎるんだよお前は」

 ぼそりと呟いた提督は、珍しく自分から仕掛けてきた。無造作に放たれた突きを躱した木曾は、バランスの崩れた所に足払いを掛けられ、フワリと身体が宙に浮いた。追撃にと鞘に納まったままの刀を腹部に打ち据えて来る提督。空中では勢いを殺しきれず、ズダンと床に叩き付けられる木曾。悶絶する彼女を見下ろしながら、くわえていた煙草を携帯灰皿に押し込み、新しい煙草をくわえて火を点けた。

「どうだ?まだ自分に納得がいかねぇか?」

「……まだまだァ!」

 素早く起き上がり、斬り上げるように提督の首を狙う木曾。白刃が提督の首筋に迫るーーが、提督は動じない。

「プッ!」

 提督はくわえていた煙草を木曾の顔面目掛けて吹き付けたのだ。火の点いた煙草が顔面に飛んでくる……普段砲弾の飛び交う戦場を駆けている艦娘にしてみれば大したダメージを負うはずもない代物。しかし一瞬、
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