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提督はBarにいる。
提督の刀と『深海鋼』
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刀の様に見える。

「見た目は普通の刀だが……コイツの刀身は“深海鋼”という特殊な鋼材で造られている」

「深海鋼?なんだそりゃ」




 対深海棲艦用の刀剣類の開発は、艦娘の誕生の頃より続けられてきた。『女帝』三笠を始め、建造された段階で艤装の付属品として刀や槍を持って生まれてくる艦娘が居た事もあり、有効な近接兵装を開発するのは可能なのではないか?と。

 しかし、普通の鋼材で造られた刀等では駆逐イ級にすら刃が立たず、稀少な『陸奥鉄』や『御神刀』の類いで漸く普通の刀程度の切れ味を発揮した。しかしそれらは造れる数に限りがあり、計画は暫く凍結されていたのだ。

 だが、偶然の閃きというのは恐ろしい物だ。ラバウル技研の研究者の一人が、『深海棲艦の装備を使用する事』を思い付いたのだ。ダイヤモンドを削る時にダイヤモンドを使うように、深海棲艦の艤装を材料に出来れば、奴等にダメージを与えられるのではないか?それは突拍子もない仮説だったが、そこは『技術の変態共の魔窟』ラバウル技研。思い付いたら即実行と言わんばかりに、実験と素材集めが開始された。

「奴等を撃沈して、海の底に沈む前に海中で待機させてた潜水艦に回収させるんだ……ウチの連中も撃沈するのは何度か手伝ってるハズだぜ?」

 古参の艦娘の中には『あぁ、アレか』と納得したような表情の者が何人かいる。

「回収した奴等の死体は、文字通り”解体“してな。金属部分はドンドン溶鉱炉に放り込んで、残りは技研の変態共の知識欲を満たす為の慰み物になってたっけな?」

「深海棲艦を鋳潰して作られたから、深海鋼……」

 さも当然、といった風に語っているが、倫理的に見たらギリギリのゾーンである。死体をかき集め、装備品を剥がして使うなど、それではまるでーー

「墓荒らし……みたいだとか思った奴いたろ?なぁ?」

 提督のオブラートに歯に衣着せぬ物言いに、僅かにたじろぐ艦娘達。

「俺達ゃなぁ、仲良しこよしの仕事してるワケじゃねぇんだよ。明日の命も解らねぇ戦争やってんだ、そして俺にはお前らを終戦まで生かす責任がある。その為に俺の手が汚れるだけで済むなら安いモンだ」

 その時、何人の艦娘が思っただろう。『あぁ、この人は自分達の為にどれだけの”業“を背負っているのだろう?』と。命を賭ける艦娘と、命の代わりにその手を幾らでも汚す事を厭わない提督。その危うくも見える絶妙なバランスが、この鎮守府の屋台骨を支えている。だからこそこの鎮守府は強固なのだ。

「……話が逸れたな。結果として実験は成功、深海の奴等の艤装から産み出した鋼材で打った刀は、艦娘・深海棲艦の両者に対して多大なダメージを与える事が実証された」

 そう言いながら提督は鯉口を切り、スラリとその刀を抜き放った。通常、
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