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秘密のデート
第二章
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「これでぶん殴るから」
「ああ、それでなんだ」
「これで殴ったらいいから」
「よくそんなの持ってるね」
「お母さんに貰ったのよ、危ないからって」
 世の中何かと、というのだ。
「だから貰ったの」
「そう、二人だけれど用心はしないとね」
「二人って誰と?」
「だから余計なことは考えないの」
 また言った亜理紗だった、怒った顔でその顔を突き出してだ。そのうえで弟から離れて玄関で靴を履いて外に出た。
 そうして車に気をつけつつだ、最寄りの駅に行くと。
 亜理紗よりずっと背の高い同じ歳と思われる黒髪で大きな目を持つ中性的な顔立ちの少年が来た。真面目そうなズボンとブラウスという服だ。
 その服装で来た彼にだ、亜理紗は少し苦笑いになって言った。
「何か無理してない?隆也」
「そうかな」
 その彼和田隆也は亜理紗に目を瞬かせて言葉を返した。二人は同じ学校で誰にも内緒で付き合っているのだ。それで今日は夏休みの秘密のデートで映画館に行くのだ。
「別に」
「いや、ブラウスにそのズボンって」
「お洒落したんだけれど」
「お洒落っていうかね」
「無理してるっていうんだ」
「そんな感じするわ」
「そういえば亜理紗は」
 言われた隆也は亜理紗の今のファッションを見て言った。
「何かね」
「何か?」
「いつもより派手じゃない?」
 こう言ったのだった。
「普段よりも」
「実はそれ弟にも言われたのよ」
「そうだったんだ」
「これがね」
「確かに派手だからね」
 赤いキャラクター柄のシャツにフリルのミニスカート、ストライブのハイソックスにだった。ブレスレットにネックレスまで見ての指摘だ。
「言われるだろうね」
「うちの弟変に勘がいいから」
 亜理紗は隆也に慎吾のこのことも話した。
「だから言われたのよ」
「勘がいいから」
「デートじゃないかともね」
「実際デートするしね、これから」
「それを気付かれることがよ」
「まずいっていうんだ」
「そうよ、誰にも内緒なのに」
 亜理紗は家での弟とのやり取りを想い出し怒った顔で述べた。
「本当にね」
「確かにね。気付かれたらね」
「隆也にしてもでしょ」
「うん、困るよ」
「だから正直慌てたわよ」
 デートだのと言われた時はというのだ。
「本当にね、けれど何とか振り切って」
「ここまで来たんだ」
「そう、じゃあ今からね」
「うん、映画館行こうね」
「映画の後はマクドナルド行って」
「そこでお昼食べて」
「スターバックスも行って」
 亜理紗は必死に隆也に話した、実はデートコースも行く場所も事前に必死に考えて調べて決めたのだ。
「そうしていきましょう」
「それじゃあね」
「ええ、今からね」
 こうしたことを話してだ、二人でだった。
 
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