ターン63 蹂躙王と荒廃のHERO
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しく、ラディアンとマリシャス・デビルの実体化したソリッドビジョンもまた消えていかない。
「覇王様、ご無事で!」
「おい、早く門を開けろ!」
僕の背後でがやがやと声がする。異常事態を感じ取った観客が、自らの主の無事を確認するためにこちらに押し寄せてこようとしているらしい。だが、その声を聞いて我に返った。僕はまだ生きている、体が消えたりしていない。
そして頭の中で再び蘇る、ケルトの遺言。なんでもいいから、生き延びろ―――――!
「もしかして……ラディアーーン!!」
咄嗟にあることを思いつき、この敵だらけの場において唯一の僕の味方であるラディアンの名を叫ぶ。ラディアンは辛うじて立ってはいるものの、既に虫の息だ。無理もない、普通のデュエルならばとっくの昔に破壊されているほどの攻撃を喰らったのだから。それでも多次元壊獣は僕の意思に応えるため最後の力を振り絞り、ちょうど開いた闘技場の門めがけてその剛腕を叩きつけた。すると鉄の門が跡形もなく吹っ飛び、近くにいた悪魔どももまとめて吹き飛ばされる。派手に地面がえぐれ、またもや土煙が周辺の視界を遮った。
「ぐわーっ!」
「は、覇王様!」
やはり、今のタイミングならケルトの言っていた、モンスターをわざと暴れさせて脱走を図るものを止めるためのシステムも作動していないらしい。少し考えれば当たり前だ、もしそのシステムが生きたままならばあの悪魔どもだってここに入れるとは思い難いのだから。恐らく誰かがここに入るために、そのスイッチを切ったのだろう。
「そうと決まれば……ありがとう、ラディアン!」
何でもいいから生き延びる。そのためにはどんな恥だろうとも、まっすぐ胸張って受け止めてやる。たとえそれが、デュエルディスクの故障にかこつけて負け確定な勝負を放り出して逃げ出すような手であってもだ。この屈辱は必ず利子をつけて返してやるとして、早くしないとこの土煙もすぐに晴れてしまう。今はそれまでになるべく遠くに逃げるんだ。
幸い妨害も受けずどうにか外に出ると、目の前にはほんの数メートルのところに一面崖が広がっていた。下を覗き込むと気が遠くなるような距離を隔ててごうごうと轟く水の音がして、最初にベージが言っていた崖の話を思い出す。でたらめに走ってどうにか外に出たと思ったら、一番最悪なルートを選んでしまったらしい。
「も、もう……!」
だけど、今更引き返す時間はない。すでに背後からは、追手の足音やら羽音やらが聞こえ始めている。恐らくこのまま闘技場の縁を周っていけばこの崖以外の場所に出れるのだろうが、そんなことをしていてもあっという間に捕まってしまうだろう。
と、なるともう、残された道はここしかない。まだアドレナリンが体に満ちているせいか、不思議とここで死ぬとは思わなかった
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