ターン63 蹂躙王と荒廃のHERO
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覇王が1歩、また1歩と歩を進める。やがて僕の正面で立ち止まり、これまで影に覆われていたその顔が明らかになる。目の色は黄色と、僕の知る彼のそれとは違う。それに彼は、あんな冷たい全てを見下すような目をしたことはなかった……いや違う、僕はあんな顔をした彼を見たことがある。正確には夢で、だが。だから断言できる、それに親友の顔なんて見間違えようがない。
「やっぱり……十代!」
なぜ十代がこの世界に来ているのか。その恰好はなんなのか。色々と聞きたいことが頭の中でごちゃ混ぜになり、その名前を呼ぶだけで精一杯だった。だが覇王、いや十代は僕の叫びに耳を貸さず、それどころか表情ひとつ変えることなくその鎧に付いた回転式デュエルディスクとでもいうべき禍々しい機械を起動させる。そして口を開くと、これまた十代の声から冷酷な声音が発せられる。
「貴様ら。それを片付けておけ」
それ、と言いながら覇王が指差したのは、主を失いその場に転がったままのケルトのデュエルディスクとローブだ。すると慌てて走ってきた何匹かの悪魔がそれを抱え上げ、後ろの門を通って運び出していった。
「片付けるって……どこにやる気なのさ!?」
「どうやらこの人間は、ここに来るとき周りもよく見ていなかったようだな」
僕の質問に、真上からベージの声が覇王の代わりに答える。そちらを睨みつけるとわざとらしくおお怖い、と震えて見せた後、教えるのが楽しくてしょうがないといった様子でケルトの形見が運ばれていった方を手で示した。
「それじゃあイチから話すとだな、この闘技場のあっち側は崖になっているんだよ。それも下まで50メートルはある断崖絶壁、おまけに底には馬鹿みたいに深い急流が流れているせいで俺たち悪魔でも無策で突っ込んだらただじゃあ済まないほどのな!」
先ほどの、闘技場の司会者としてのわざとらしい敬語はすっかり鳴りを潜め、恐らくこちらが素の性格なのであろう口調で意気揚々と喋るベージ。それは別にどうでもいいのだが、その内容は聞き流すわけにはいかなかった。そこまで聞けば、最後まで聞かずともその先は予想できる。
「それじゃあ、ケルトの道具は……」
「今頃は魚の餌だろうなあ!それとも、海竜にでも食われたか?」
「この……!」
「茶番はもういいだろう。貴様も構えろ、この覇王が直々に相手してやる」
ついカッとなってベージに突っかかっていこうとした僕の背に、覇王の言葉が冷たい氷の刃のように突き刺さる。そうだ、今はあの雑魚を相手にしている場合じゃない。
ドクン、と胸の奥で何かが身じろぎするのを感じた。その正体はわかっている。この覇王の持つ、こうして向かい合っているだけでもわかる恐るべき力に僕の心の闇が反応しているのだ。戦え、倒せ、そう何度も繰り返し求め続ける声が聞こえて
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