工廠での幕間
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は休憩中なのか、くわえ煙草をふかしながら、缶コーヒー片手ににこやかに近付いてきた。
「繁さんも元気そうだネー?暑くてダウンしてるかと思いました!」
「馬鹿言っちゃいけねぇよ、おめぇの旦那の小僧がへばってねぇのに俺が倒れてたまるかってんだ!」
ハッハッハ、と笑いながらコーヒーを啜る繁さん。提督もいい歳してるのだが、繁さんから見れば『小僧』らしい。
「ホレ、嬢ちゃんも飲みねぇ」
繁さんはそう言って金剛にもよく冷えた缶コーヒーをくれた。金色の缶に、パイプを加えた男性の肖像がプリントされた物だ。
「頂きマス」
プルタブを起こし、一口。キリッと冷えた液体が口から喉を通って胃の腑に落ちていく。紅茶とは違う仄かな苦味とミルクのまろやかさ、砂糖の甘味が絶妙のバランスだ。
「たまにゃあコーヒーもいいだろ?」
コーヒーを飲み、煙草をふかしてニカッと笑う繁さん。金剛自身もコーヒーが嫌いな訳ではない。だが、イギリス生まれは紅茶党という既成概念が邪魔をして、食わず嫌い的に避けていた所があったのだ。
「そうデスね、冷やして飲むなら紅茶よりいいかもしれません」
にこやかに笑いながらそう繁さんに返してやる。
「……にしても、また大規模作戦の時期か。何度来ても、この忙しさと薄ら寒さは慣れねぇぜ」
繁さんは元々、横須賀の近くに小さな鉄工所を構えていたらしい。そこを深海棲艦に襲われて、全てを失った。残ったのは己の腕だけ……そこで海軍に整備兵として志願し、ウチの提督が引き抜いて来たらしい。深海棲艦が攻めてくる、と聞けば思い出すのも無理はない。
「大丈夫よ、繁さん。私達がGHQにしてやるネ!」
「GHQ?なんだそりゃ?」
「Go home quickly(とっとと帰れク〇野郎!)ネ!」
暫くきょとんとしていた繁さん、途端に笑い出し、
「ハッハッハ、そいつぁいい!傑作だ!……まぁ、元々心配なんざしてねぇさ。嬢ちゃん達とあの小僧なら、絶対に勝つと信じてるからな」
朗らかに笑う老整備兵の目尻には光る物が見えた。
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