工廠での幕間
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人と馴れ合おうとしない。何となく提督にはなついているようだが、照れ隠しなのか言葉は乱暴だ。
「アラシオ、オオシオ、アサシオ、ミチシオ……OK。頑張って覚えるわ」
「さて、明石を怒らせると後が面倒デス。そろそろ行きますよ、アイオワ」
そう言って第8駆逐隊のメンバーに別れを告げ、2人で工廠の奥へと歩みを進める。
『うぅ〜、日本の艦娘は似た名前の娘ばかりで覚えにくいわ……』
『それを言ったらアメリカのフレッチャー級の方が覚え切れないと思いますが?』
『あの娘達は例外よ、例外。数が多すぎるもの』
『流石に175隻は在籍していた人でも覚え切れませんか……』
そう、アメリカ海軍で最も多く作られた駆逐艦・フレッチャー級。その総数は175隻にも及び、日本に配備されている艦娘全種類と同じ位の姉妹艦がいる。顔と名前を一致させるだけで苦労しそうだ。
『でも、あの娘達は似た名前の娘は居なかったもの。まだ覚えやすかったわ』
アラシオ、オオシオ、アサシオ、ミチシオ……と先程聞いたばかりの駆逐艦の名前をブツブツと繰り返し呟いて必死に覚えようとしている姿は、自ら進んで馴染もうとする素晴らしい取り組みだ。だが、
「あ、漸く来た!待ちくたびれましたよ〜。こっちも忙しいんですからね!?」
急いでいない時ならば、だが。
「まったくもう、工廠班も大規模作戦前は忙しいんですからね!?その辺解ってますか金剛さん!」
「そ、ソーリー、ソーリーよ明石ぃ。アイオワを色々案内してたら時間かかっちゃったのヨ〜」
腕組みしてプリプリ怒る明石に、平謝りする金剛。そう、観測部隊からの報告で、近々深海棲艦が大規模侵攻を企てている可能性が高い、との報告が入った。それを受けて大本営は大規模作戦に備えて各鎮守府は相応の準備をされたし、との通達を各鎮守府に発布。それで我が鎮守府でも在庫の装備の点検や、新規装備の開発、既存の装備の改修等でてんてこ舞いだ。そんな忙しいスケジュールの中にアイオワのメディカルチェックを無理矢理捩じ込んだので、明石はご立腹らしい。
「まぁいいですよ。さてアイオワさん、早速ですが身体のデータを採らせて貰いますね。奥の部屋へどうぞ」
明石に促されてアイオワも奥の部屋へと向かう。手持ち無沙汰になってしまうが、ここは大人しく待つしかないだろう。
「よぅ、金剛の嬢ちゃん。新人さんの付き添いか?大変だねぇウチのエースだってのに」
声を掛けてきたのは、工廠で働く数少ない男性職員の繁(しげ)さん。70歳を超えているハズなのに未だに現役の整備兵さんで、皆からは『おやっさん』の愛称で親しまれている。中でも溶接は一級品らしく、明石や夕張が出来ない箇所も繁さんなら難なくやってしまうらしい。今
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