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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百三十三話 捕虜交換後(その1)
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軍部が協力する事もまれだったのです。帝国が一つにまとまり堅密に協力するようになったのは閣下が司令長官になられてからです」
メックリンガーが身を乗り出してくる。茶化して終わらせる事は出来んな。

「それは……、イゼルローン要塞が落ちたからです。あの時帝国は危険な状態にあった。危機が皆を一つにまとめたのですよ」
俺の言葉にメックリンガーは首を振った。

「そうではありません。いえそれも有るのでしょうがそれだけではないと私は考えています」
おいおい、頼むから溜息混じりに話すのは止めてくれ。なんか俺が悪いみたいじゃないか。

「閣下、帝国はシャンタウ星域の会戦後も内乱の終結後も一つにまとまっています。まして政府内部はリヒテンラーデ侯達貴族と改革派が協力しているのです。何故です? 」
「……」

何故と言われてもな、新しい帝国を創るにはそれが必要だからだろう。
「帝国のために必要だから、閣下はそう御考えではありませんか?」
「ええ、そうです」
おいおい、また溜息か、何でそこで溜息が出る?

「たとえ必要だと分かっていてもいがみ合うのが人間です。今帝国が一つにまとまっているのは閣下が軍内部を、政府と軍を、そして政府内部をまとめているからです」

おかしいな、何でそういう風に考える?
「……少し大袈裟ではありませんか?」
「大袈裟ではありません。私だけではない、皆がそう思っています。そして敵もそう思っているのです」
「……」

敵もそう思っている……。地球教は俺が死ねば帝国政府上層部は混乱ではなく、分裂に向かうと考えているという事か。だとすると……。

メックリンガーが手を伸ばしてきた。そして俺の手を握る、そして強く揺すぶった。
「閣下、どうか御自愛ください。私達は皆、閣下を失う事は出来ないのです」
「……メックリンガー提督」

「ケスラー提督も閣下に言ったはずです。閣下は我々の、いや帝国の支柱なのです。その事を認識してください、どうか、御願いです」
メックリンガーが縋るような眼で俺を見ている。どう答えればいいのだろう。

「皆が心配してくれている事は分かりました。私は少し自分の命に無頓着だったのかもしれません。気をつける事にしましょう、それで良いですか?」
メックリンガーは俺の言葉に多少不満だったようだが、それでも俺の手を離してくれた。

「小官は閣下と三十年後の世界を見るのが夢なのです。どうかその夢を実現させてください」
「そうですね、実現しましょう」



帝国暦 489年 1月 1日  帝国軍総旗艦 ロキ エルネスト・メックリンガー


司令長官の私室を出て艦橋に向かう。私が艦橋に入ると副官のザイフェルト中尉がほっとしたような表情をして急ぎ足で近付いて来た。同時に司令部の要員が
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