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兄はコミケ好き
第二章
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「算数だけはね」
「全く。どの教科も出来ているのに」
 侑子は困った顔でだ、上の娘にこうも言った。
「算数だけは駄目なんだから」
「昔からね」
「テストの成績も悪いし通信簿でも3で」
「3ならいいじゃない」
「かろうじてって感じでしょ」
「それはね」
 侑花も事実なので否定出来なかった。
「先生もそう言ってたわ」
「全く。2じゃなくていいって言えばいいけれど」
 侑花の成績はそこまで悪くはない、塾にも通っているだけあって成績はクラスの中でもいい方なのだ。
「いつもいつも算数だけは」
「駄目なのよね、だからね」
「だから?」
「お兄ちゃんが家に帰ったらね」
 朝の玄関での話をだ、侑花は母に話した。
「教えてもらうから」
「またそれね」
「何だかんだでお兄ちゃん教えてくれるから」
「あの子は昔から頭はいいのよね」
「頭はって」
「ちょっと漫画好きが過ぎるだけで」
 侑子から見て少し度が過ぎているのだ、彼の漫画好きは。
「成績優秀だから」
「それで大学にも通ってて」
「算数もよかったのよ」
「そうだったの」
「そう、けれどあんたはね」
「だから私は私でお兄ちゃんはお兄ちゃんだから」
 侑花はこれまで以上に憮然とした顔になり母に言った。
「算数が苦手なのはね」
「兄妹でもっていうのね」
「そう、だからね」
「お兄ちゃんが帰ってからなのね」
「教えてもらうから」
「じゃあそれでなのね」
「宿題終わらせるわ」
 最後に残った算数のそれをというのだ、そしてだった。
 侑花はこの日は学校の宿題も塾の宿題も算数以外は終わらせていたので遊んで過ごした。家でミニファミコン、兄が買ったそれをリビングでしていると。
 家事の合間で休んでいた母にだ、こんなことを言われた。
「懐かしいゲームしてるわね」
「懐かしいって?」
「今あんたがしてるゲームよ」
 ミニファミコンのそれがというのだ。
「バルーンファイトとかマリオブラザースとかね」
「単純なゲームだけれど」 
 侑花はバルーンファイト、相手の風船を割って倒すそのゲームをしながら母に話した。
「滅法楽しいわ」
「お母さんが子供の頃のゲームよ」
「そうなの」
「そう、あんた位の歳の時のね」
「それってかなり昔じゃない」
「お兄ちゃんもまだ生まれてないわ」
 これは当然のことだ、侑子がまだ侑花の年齢位で結婚して子供がいる筈がない。
「そんな時のゲームよ」
「そんな昔なの」
「まさか今見るといは思わなかったわ」
「さっきデビルワールドしたけれど」
「そのゲームもよ」
 デビルワールドもというのだ。
「古いわよ」
「お母さんが子供の頃の」
「その時のゲームよ」
「あのゲームもなのね」
「懐かしいわね、本当に」

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