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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百三十二話 捕虜交換(その3)
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手だな、軍事面だけではなく政治面においても我々を追い詰めてくる。彼が単なる軍人なら此処まで苦労はしないのだろうが……』

溜息交じりの元帥の言葉だ。全く同感だった、ヴァレンシュタイン元帥は軍人というよりも政治家としての資質に恵まれているように見える。それも国家というものが分かる政治家だ。そういう相手を敵に回すとは……。

『君との会話だがレベロに話したいと思うが構わないかね?』
「それは構いません。但しあれは私が感じた事です。証拠は何処にもありません」
『ヤン提督の推論か、構わんよ、レベロは君を高く評価している。それに彼と直接会って会話をしたのは君だ。それなりに根拠は有るだろう』

レベロ委員長に伝わればそれはトリューニヒト議長にも伝わる。元帥が私に確認をとったのはその所為だろう。トリューニヒトならどう考えるだろう、レベロ委員長なら……。政治家がどう考えるか急に知りたくなった。

「シトレ元帥、後ほどレベロ委員長やトリューニヒト議長が私の推論をどう考えたか、教えていただけませんか」
『ほう、君が彼らの意見を求めるとは……。良いだろう、後ほど連絡しよう』

そう言うとシトレ元帥は“それでは、また。良い年を迎えてくれ、ハイネセンで会えるのを楽しみにしている”と言って通信を終わらせた。スクリーンは暗くなり何も映していない。良い年か、今年は小競り合いは有ったが戦争は無かった。そういう意味では良い年だったのだろう。

しかし相手の恐ろしさを嫌というほど認識した一年だった。少しも気の休まるときなどなかった……。これから今日は新年を迎えるパーティがある。そろそろ準備をしなければならないだろう。

年が明ければ忙しくなるだろう。両国の捕虜がこのイゼルローン回廊を通航する。おそらく大変な騒ぎになるはずだ。捕虜が戻ってくれば軍の再編も少しは進むだろう。それにクブルスリー提督達も戻ってくる。兵だけではなく将の面でも補充が進むだろう。

ウランフ提督も喜ぶだろう。新兵を熟練兵にするために自ら指揮を執って鍛えているが訓練用の艦艇も教官も不足していて遅々として進んでいないと聞いている。おそらく今一番ストレスが溜まっているのは彼のはずだ。捕虜を再訓練すれば新兵と合わせて一個艦隊は楽に編制できるはずだ。同盟の軍事力はこれで六個艦隊になる。

パーティが終わったら帰還兵歓迎式典に出席するためにハイネセンに行かなければならない。おそらくハイネセンでは今日の話が出るだろう。対策も含めて話すことになるはずだ。だが対策が出るのか……、正直ハイネセンに行くのは気が重い。

ヴァレンシュタイン元帥……、私は彼の考えを受け入れる事ができるだろうか? 平和と民主主義のどちらを選ぶかと言われたが、選ぶ事ができるだろうか? 自分が帝国に生まれていれば簡単だった。彼の
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