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真田十勇士
巻ノ七十一 危惧その一

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                 巻ノ七十一  危惧
 秀吉に子が産まれたことは瞬く間に天下に知れ渡った、家康はこのことを懐妊の頃より知っていたが。
 彼は大坂の己の屋敷でだ、主な家臣達にこう言った。
「今もじゃ」
「信じられませぬな」
「太閤様にお子とは」
「五十五を超えられて」
「まさか」
 四天王の面々も言うのだった。
「お子とは」
「いや、それはです」
「どうにも」
「俄には」
「まあわしもじゃ」
 ここでこう言った家康だった。
「正室は今はおらぬがな」
「ご側室の方がですか」
「幾人かおられ」
「そして、ですな」
「お子も」
「出来ておるが」
 しかしと言うのだった。
「太閤様はな」
「はい、どうにも」
「あの方は近頃めっきり弱られています」
「衰えがです」
「隠せませぬ」
「それでお子か」
 難しい顔で言うのだった。
「妙な話じゃ」
「若しや」
 本多正純が言って来た、本多正信の子で父親以上の謀略家として家中で知られている。それと共に忌み嫌われてもいる。謀略を嫌う家中の気風により。
「それは」
「滅多なことを言うな」
 すぐにだ、酒井がその正純を嫌悪の目で見て言った。
「その様なことはな」
「そうじゃ、そんなことは言うな」
「武士の風上にも置けぬ言葉ぞ」
「口に出すでない」
 榊原と本多、井伊も正純に言う。
「全く、御主といい父親といい」
「碌なことを言わぬな」
「そして考えぬわ」
「そこまで言うでない」
 家康はここでは四天王を窘め彼等にこう言った。
「まあとにかく信じられぬ話じゃ、今も」
「ですな、確かに」
「そのこと自体はです」
「太閤様にお子ですか」
「今ここで」
「このままではな」
 さらに言った家康だった。
「跡を継がれるのはな」
「関白様ですな」
「聚楽第におられる」
「あの方でしたな」
「このまま」
「そうなる筈であったが」
 それがというのだ。
「ここでな」
「わからなくなったと」
「太閤様にご子息が生まれ」
「そうなったからこそ」
「これは」
「そう思う、甥よりもな」
 家康は血の話もした。
「やはりな」
「実の子」
「それ故に」
「太閤様もですか」
「ここは」
「既に跡継ぎは決められておるが」
 その秀次にだ。
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