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夏は夜
第五章
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「今周りに誰もいないし」
「それじゃあ今から」
「うん、しようキス」
 美咲は自分から言った。
「誰にも内緒よ」
「それじゃあな」 
 二人は向かい合った、花火から目を離して。
 そうして見つめ合ってだ、そこからだった。
 翔平は美咲の両肩に手をやった、美咲はゆっくりと目を閉じた。そのうえで二人は唇を重ね合った。それは一瞬だったが。
 その一瞬のキスの後でだ、美咲は泣きそうな笑顔で言った。
「夏が余計に好きになったわ」
「俺もだよ」
「本当にね」
「俺この時忘れないからな」
 キスした今この時をというのだ。
「ずっと」
「そうか、それじゃあまたな」
「花火見て」
「九時までだったな」 
 花火はというのだ。
「じゃあ家まで送るな」
「駄目、そうしたらお母さんにばれるから」
「いや、危ないだろ」
「だからスタンガンとか持ってるから」
「それでも一人より二人の方がいいだろ」
「その方が安全だから」
「送るな」
 翔平は微笑んでだ、美咲に言った。
「家まで」
「じゃあお願い」
 美咲は翔平の気持ちを受け止めてだ、そうしてだった。
 花火の後は彼に家まで送ってもらって家の玄関のところで手を振り合って別れた。そして意気揚々として家に帰ったが。
 父はまだ帰っていなかった、夢乃はテレビを観ていたが自分に只今と言った娘の顔を見てすぐに言った。
「成程ね」
「成程って?」
「夜楽しんできたのね、二人で」
「えっ、二人って」
「あんた彼氏いるでしょ」
 娘の顔を見て微笑んでいた、そのうえでの言葉だった。
「それでその子と一緒だったでしょ」
「それは」
「怒らないわよ、変なことしてないとね」
「変なことは」
「そう、そこまでいかない限りはね」
「そうなの」
「とにかく彼氏と一緒だったでしょ」
 夢乃はあらためて美咲に聞いた。
「そうでしょ」
「それはまあ」
「やっぱりね。顔に出てたわよ」
「顔に?」
「そう、二人で楽しんできましたって」
「それどういうお顔なの?」
「女の子ってのは顔に出るから」
 だからだというのだ。
「母親はわかるのよ」
「何か意味がわからないけれど」
「あんたも結婚して子供が出来る頃にはわかるわ」
 その時になればというのだ。
「人生の経験を積んでね」
「そういうものなの」
「そういうものよ。それと蚊に刺されなかった?」
「あっ、多分」
 手や足を見てだ、美咲は母に答えた。
「大丈夫みたい」
「それは何よりね。じゃあシャワー浴びて」
「そうしてね」
「休みなさい」
「うん、じゃあね」
「お父さんが帰る前にね」 
 風呂がかち合わない様にというのだ。
「入りなさい、いいわね」
「そうするわね」
 美咲は母に応えてだ
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