百十 湖畔で交わす
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に露わにしていた。
どうしてそこまで言い切れるのだろう、と紫苑はためらい、ナルトから顔を逸らす。彼の強さが紫苑には眩しかった。だからこそ眼を逸らす紫苑には、ナルトの内面の弱さには微塵も気づけない。
運命を受け入れようとしないナルトに、紫苑はなんだか躍起になって反論した。
「無理じゃ」
「無理じゃない」
「ならば、私が死ぬことに…」
「お前だって死なせない」
意地になって言えば言うほど、即座に否定され、紫苑はナルトをキッと睨み返した。
「どちらかが死なねばならぬのじゃ!」
「そんなもの、誰が決めた」
「何度も言わせるな。これは運命…――」
眼を瞑って反論していた紫苑は、ぱっと顔を上げて、思っていた以上に近いナルトの顔に、ドキリとした。
「―――俺が守る」
自分の間近にあるナルトの顔。髪の毛に滴る雫が金色に輝き、その濡れた前髪から覗き見える意志の強い青の瞳が、紫苑の顔を覗き込んでいる。
反射的に紫苑は身体ごとナルトから逸らした。彼女の心臓は、体内ではっきり聞こえるほどドキドキ高鳴って煩かった。
「…そ、そんなこと出来るわけが…」
「信用しろって」
とても優しい声が彼女の耳朶をやわらかく包み込む。
赤く染まった頬を見られぬよう紫苑はナルトに背を向けたまま、大木の幹に爪を立てた。激しい動悸を、大きく深呼吸することで落ち着かせ、紫苑はようやっと振り返る。
死ぬ運命を、信用などという曖昧なもので変えてみせるなどと綺麗事を言う彼に、もう一度現実の無情さを知らしめるつもりで、紫苑は口を開き、そのまま一言も発することもなく閉ざした。
ナルトは背を向けていた。
紫苑をおぶさる体勢で屈んでいる彼は、肩越しに振り返ると彼女を静かに促した。物言わぬその背中が、紫苑には酷く力強く頼りになるものに思えた。
紫苑は引きつけられるようにナルトの背におぶさる。胸元に差した鈴が、ちりん、と鳴った。
「ナルト…」
「うん?」
ナルトの首に回した自分の腕を紫苑はぎゅっと握り締めた。
「…―――約束しろ」
守ってくれるって。運命を変えてくれるって。死なないでくれるって。
万感の想いを、約束、という一言に全て詰め込んで、紫苑は願う。彼女と彼女の想いを背負い、ナルトはすっくと立ち上がった。
「ああ。約束する」
その約束がどれのことを指しているのか、決して口には出さなかったけれども。
封印の祠の前を埋め尽くす幽霊軍団の武人達。
ひしめき合う青銅の石像を、紫苑を背にしたナルトは俯瞰していた。
谷底の湖から崖を駆け登り、再び祠のあ
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