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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百三十話 捕虜交換(その1)
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ようだがその辺りも誰かに似ている。

ヤン提督の傍には金褐色の髪とヘイゼルの瞳をした美しい女性士官が居る。グリーンヒル大尉、ヤン提督の副官だが彼女は宇宙艦隊総参謀長グリーンヒル大将の娘でもある。ヤン提督はこの若さで最前線を任されるのだ、中央から信頼されているのだろうが軍の中央に強い絆も持っているようだ。

他にもヤン提督を守るかのようにローゼンリッターの連隊長シェーンコップ准将が傍にいる。ヤン提督を守るつもりか……、安心して良い、私はヤン提督に危害を加えるつもりは無い。この辺りも元帥閣下に似ている。元帥閣下にもリューネブルク大将がいる。

少し離れたところにこちらを熱心に見ている少年がいた。整った顔立ちをしている。年の頃は十五、六だろうか……。眼でヤン提督に問いかけた。ヤン提督は困ったように笑みを浮かべると少年を呼び寄せた。

「私の養子です、ユリアン、メックリンガー提督にご挨拶しなさい」
「ユリアン・ミンツです。お目にかかれて光栄です」
養子? 思わず二人を見比べた。ヤン提督は結婚してないはずだ、まだ若いのに養子?


宇宙暦 797年 12月 22日    イゼルローン要塞 フョードル・パトリチェフ


今日はメックリンガー提督と共に植物園の散歩をした。捕虜交換の調整も終わり向こうも暇だったのだろう。要塞の中の植物園を見たいと言ってきたのだ。自由に歩き回らせるわけにはいかない、そこで案内役という名目で俺がメックリンガー提督に同行する事になった。

案内役という監視である事はメックリンガー提督も分かっていただろう。だが向こうは少しも嫌な顔をしなかった。穏やかに笑みを浮かべながら植物園の中を歩く。幸い彼はこちらの言葉が話せる。変な緊張をせずに歩く事が出来た。いい散歩だった、久しぶりのことだ。

ユリアンに会ったのは植物園のベンチの傍でだった。最近ヤン提督が植物園のベンチで一人考え込んでいる姿が目撃されている。それでちょっと興味が湧いたので見に来たという事だった。

メックリンガー提督がそれを聞いて面白そうな顔でベンチを見た。そしてベンチに座ると“こんな感じかな”と言ってロダンの考える人のポーズを取った。意外にユーモアが有る。ユリアンと二人で笑ってしまった。

俺が植物園の中を案内をしているというとユリアンは妙な顔をした。多分監視だと分かったのだろう。なかなか聡い少年だ、ヤン提督が可愛がるのも分かる。そこからは三人で植物園を散歩した。

ユリアンはヴァレンシュタイン元帥に関心が有るらしい。いや、彼に関心の無い人間などいないか……。一緒に歩き出してから直ぐにメックリンガー提督に話しかけた。

「もう直ぐヴァレンシュタイン元帥が此処にいらっしゃるんですね」
「そうだね、あと三日もすれば閣下は到着されるだろう
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