第二章 【Nameless Immortal】
肆 裏/表の接合点
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て勝手な事を言われても、それでも決断した想いがあったのだろうか。
寧ろ、一人欠けたからと臆する志の方が不適格なのだろう。
(ニーナさんも……)
不意にあの雑誌の事を思い出す。記事を読み、覚えた怒りも。
彼女の思いはどれほどのものか。今、自分が想起したその在り方に近いのだろうか。
きっとそうであってほしいと思う。
寧ろ、自分などが思える程度を超えて欲しいと願う。
望めるならば、例え不正確で不格好であれ、傍らで話す二人の様に周りからの理解の手が及んでほしい。
彼女の意思を穢すものが、矜持を弄ぶ者が、これ以上現れないで欲しいと。
「じゃあな。また明後日」
バス停に着き、男子生徒の片方が下車する。恐らく彼らは同じ教室の友人同士なのだろう。
残された一人は黙って景色を眺め始める。
(……そういえば)
少しだけ静寂に近づいた車内を感じながら、ふとレイフォンは思った。
じゃあね、でもなく。
また明日、でもなく。
さようなら。
カノンの別れの言葉はいつもそうであった。
最悪だ。
どうしようもなく最低で最悪な気持ちだ。
抑えられぬ嫌悪を顔に出しながらカリアンの心中は荒れていた。
雲光の陰りに照らされた月夜の下、カリアンはグランが軟禁されている宿泊施設に居た。
監視を行っていた都市警察から連絡を受け到着したのがつい先ほどの事だ。
カリアンの抱く憤りの理由は有効打の得られぬ調査では無い。
監視役の生徒が対象と談笑し、雑誌を読ませ、テーブルに菓子が置かれていた事でもない。
対象が懐柔策に乗り出すならば生徒を変えるか、叱責し引き締めれば済む話だ。
だが、と。カリアンは部屋の隅に置かれた小さなテレビを忌々しげに睨む。
グラン・フーフォリオ・ノーブルが提案した情報を渡すための条件。
それはオール・オア・ナッシングの馬鹿げた通告であった。
「この都市でハ、未熟な戦士達の矜持をぶつける試合があります。私達の結末を決めるに相応シい舞台が。私達の想イに値をつけ、夢を託スのです」
ヴァンゼが此処に居なくてよかったとカリアンは思う。
嬉しげに、愉しげに、誇らしげに。
悪戯をする子供のような笑みを浮かべ、隻眼の男はカリアンを見つめる。
「私達で賭けましョう。生徒会長と夢ノ後見人。積み上げた金額の多い側が勝者。望ム対価を相手から獲る」
それは、夢を託す彼らをどれだけ理解し信頼するかの勝負。
「――小隊員達を用いた賭ケ試合。私はこれを条件とシます」
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