第三十五話 欧州の美その九
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「ずっとフォークで食ってたって思ってたよ」
「それが違ったのよ」
「意外だな」
「そうよね」
「そう思うとな」
フェットチーネをさらに食べつつだ、龍馬はまた言った。
「パスタ食うのも面白いな」
「歴史を感じて」
「それでな」
「そうよね、フェットチーネもね」
「やっぱり歴史があるんだろうな」
「こうなるまでにね」
「じゃあその歴史とかも思いつつな」
そのうえでと言うのだった。
「フェットチーネ食うか」
「そうしましょう」
「それでこれ食ったら」
フェットチーネをだ。
「後は魚料理が出て」
「それからメインね」
「鴨料理らしいぜ」
「鴨なの」
「ああ、それも楽しみにしような」
「そうね」
にこりとしてだ、優花は答えた。
「最後までね」
「デザートまでな」
「ワインも飲んで」
実際に一口飲んだ、その赤いワインを。
「そしてね」
「食った後は」
「陶器のコーナーに行きましょう」
「陶器な、触ったらな」
「駄目よ」
笑ってだ、優花はそれは止めた。
「わかってると思うけれど」
「ああ、俺もそれはな」
「しないわよね」
「マナーだからな」
そうした展示物に触れないこともだ。
「だからな」
「そうよね」
「そうした時酔っててもな」
「というかお酒で許されることは身内同士でだけよ」
そうした親しい間柄でのみというのだ、酒での粗相が許されるのは。
「それも過ぎたら、だし」
「わかってるさ、俺も気をつけてるさ」
「お願いね」
「ああ、けれど陶器ってな」
「どうしたの?」
「普通にあるだろ」
こうも言う龍馬だった、丁度食べている皿を見ながら。言うまでもなくそれも陶器である。
「今もこうしてな」
「欧州では違ったから」
「ああ、あっちじゃか」
「最初はパンで」
「パン?」
「そう、パンをお皿にしてたの」
「ああ、確かにお皿にもなるな」
切ったパンの形を思い出してだ、龍馬は答えた。
「食パンとかな」
「そうでしょ、アーサー王の物語にあるみたいな」
「中世か」
「その頃はパンがお皿だったの」
「成程な」
「それか木の食器とかカップが出来て」
「ビールとかの、ゲームとかでも出て来るな」
中世の欧州か若しくは欧州を模した世界観を舞台とした作品においてだ。居酒屋でラム酒やビールを飲む時のコップである。
「あれな」
「そう、ああいうのとかね」
「ガラスはな」
「物凄く高価だったから」
「滅多にないか」
「あと銀の食器ね」
「それはもう貴族だけだな」
銀と聞いてだ、龍馬はすぐに言った。
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