第三十五話 欧州の美その八
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「つまりね」
「それだけな」
「茹で加減がよくて」
「味もな」
「いいわね」
「ここにな」
ここでだ、龍馬は。
パスタに粉チーズをかけて食べてだ、こうも言った。
「こうしたら余計に美味いんだよな」
「パスタにはチーズよね」
「もう大蒜は使ってくれてるしな」
「オリーブオイルもね」
「だったらな」
「ここでチーズもかかったら」
優花もチーズをかけて食べる。
「完璧だな」
「パスタにはチーズよ」
まさにと言うのだった。
「最高の組み合わせで、それに」
「それに?」
「実はパスタってね」
そのパスタの話もするのだった。
「最初はチーズしかけていなかったの」
「ソースはなかったのか」
「茹でたパスタにチーズをまぶしてね」
そのうえでというのだ。
「手で持って高々と掲げてから食べていたのよ」
「フォーク使わなかったのか」
「昔はね、スパゲティの食べ方だけれど」
「スパゲティはそうして食っていたのか」
「十九世紀の最初の頃のナポリとかだと」
つまりスパゲティが食べられはじめた頃だ。
「そうして食べていたの」
「手で持ってか」
「チーズをまぶしただけでね」
「そんな食べ方だったんだな」
「そう本に書いてあったわ」
「フォークを使わなかったなんてな」
驚いた顔でだ、龍馬は言った。
「しかもソースもか」
「なかったの」
「それに驚いたな」
「私も最初にこの話本で読んで驚いたわ」
「そうだよな」
「あとね」
優花は龍馬にさらに話した。
「カルボナーラもね」
「あのソースか」
「あれは実は結構新しいソースみたいよ」
「あれっ、そうなのか」
「第二次世界大戦でアメリカ軍がイタリアに来て」
北アフリカ戦線からシチリア、そこからイタリアに上陸していったのだ。太平洋でもそうだったがアメリカ軍は欧州戦線でも蛙跳びで進撃していたのだ。
「アメリカ軍の人達がスパゲティを食べたいって言って」
「そこからか」
「その頃のイタリアは戦争で物資が不足していたのでアメリカ軍の物資を使わせてもらって」
それでというのだ。
「ベーコンとか卵、生クリームとか」
「そうしたのを使ってか」
「ああしてね」
「濃いパスタになったんだな」
「そうなの」
「面白い話だな」
龍馬はここまで聞いて唸った顔になった。
「それはまた」
「そうでしょ、確かにアメリカ人の好みのパスタよね」
「実際にな、けれどな」
「けれど?」
「カルボナーラって昔からあるって思ってたよ、スパゲティもな」
それの食べ方もというのだ。
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