巻ノ七十 破滅のはじまりその十二
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「礼儀正しく謙虚な」
「よく出来た方じゃな」
「治部殿、刑部殿に比べて目立ちませぬが」
「忠義のお心があるな」
「確かな方です、ただ」
大野についてだ、幸村はこうも言ったのだった。
「私はない方にしても押しはです」
「ないな」
「治部殿や刑部殿の様に身体を張ってお止めする方ではないかと」
「引き摺られるな」
「そうした方に見受けますが」
「誰かを裏切る方ではない」
「はい」
まさにとだ、幸村は語った。
「あの方も」
「そうであるな」
「ではこの話も」
「やはりな」
「口さがない噂ですか」
「捨丸様の時もな、そしてな」
「今度も」
「そうした話が出る」
まず、とだ。昌幸は幸村に話した。
「このことは既に源三郎にも話したが」
「兄上にも」
「話した、しかしな」
「それでもですな」
「この話はおかしな方向に向かう恐れがあり」
「そうした嫌な噂もですな」
「出る、このことを頭に入れておくことじゃ」
幸村に対して話した。
「わかったな」
「わかり申した、それでは」
「うむ、そのうえでな」
「このまま都で務めを果たしていきまする」
「その様にな」
こう話してだ、そしてだった。
幸村は秀吉にまた子が出来たことを祝いつつも確かに不吉なものを感じていた、そのうえで己の下に戻った十勇士達に話した。
「父上からのお話じゃ」
「若し産まれるお子がですか」
「ご子息ならばですか」
「気をつけよ」
「そう言われますか」
「そうじゃ、父上に言われたが確かにな」
実際にとだ、幸村は十勇士達に話した。
「天下に二日はいらぬし跡継ぎもじゃ」
「二人はいらぬ」
「そうなりますか」
「うむ」
その通りだというのだった。
「まだわからぬがな」
「若しも、ですな」
「ご子息が産まれたならば」
「その時はですか」
「我等も」
「動いてもらうやも知れぬ、拙者もじゃ」
幸村自身もというのだ。
「動く」
「そうされますか」
「そしてそのうえで」
「関白様をお助けしますか」
「そうする、だから頼む」
是非にと言うのだった、十勇士達に。
「その時はな」
「承知しました」
「では我等もです」
「関白様の為に」
「働かせて頂きます」
「その様にな、さて」
ここまで話してだ、、幸村は。
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