暁 〜小説投稿サイト〜
真田十勇士
巻ノ七十 破滅のはじまりその十

[8]前話 [2]次話
「十万石程度ではな」
「はい、徳川家ならともかく」
「所詮十万石じゃ」
 その程度ならばというのだ。
「太閤様にしてみればどうということはない」
「だからですな」
「そこまではするな、しかし」
「はい、関白様はです」
 幸村は昌幸に強い声で言った、申し出る様にして。
「それがしを認めて下さいました」
「そうじゃな」
「人としてです」
「己を認めた者は見捨てたくない」
「そう思いまする」
「だからじゃな」
「はい、出来れば」 
 幸村は必死にだ、昌幸に言った。
「そう考えています」
「そう言うと思っておったわ、ではな」
「それではですか」
「何かあったら言え」
「では」
「わしがこの頭を使ってじゃ」
 そしてというのだった、昌幸は幸村に笑って話した。
「家を守る」
「そうして下さるのですか」
「何、確かに太閤様から見れば吹けば飛ぶ様な家じゃが」
 それでもというのだ。
「護ることは出来る」
「それでは」
「存分にやれ、しかし太閤様は切れる方じゃ」
 昌幸は秀吉のこともだ、幸村に話した。
「動きも非常に速い」
「だからですな」
「その動きを読みきることは難しい」
 それでというのだ。
「そうした方じゃからな」
「関白様をお護りするには」
「御主も全てを賭けて動け」
「それでは」
 幸村は父の言葉に強い声で頷いた、しかし。
 昌幸はその幸村にだ、こうも言ったのだった。
「だがそれはな」
「半々ですな」
「姫君が生まれる場合もある」
「その可能性もですな」
「半分じゃ」
 それだけあるというのだ。
「そして姫君が生まれればな」
「何もないですな」
「その姫君がどうなるか」
「それは」
「うむ、よいことになる」
 茶々が産む子が娘ならというのだ。
「徳川殿のご子息のどなたかとな」
「婚姻を結び」
「強い結びつきとなりますな」
「その場合はな、あと死産もある」
「産まれても」
「そして産まれた子もな」
 折角産まれてもというのだ。
「すぐ死ぬことも多い」
「ですな、赤子は」
「幼な子もな」
「そういえば捨丸様も」
「むしろその場合はな」 
 苦い顔での言葉だった、だがそれでもと言うのだった。
[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ