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真田十勇士
巻ノ七十 破滅のはじまりその九

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「確かに。その場合は」
「若し太閤様が心変わりされれば」
「その時は」
「天下が乱れるもとじゃ」
 それになるというのだ。
「だからな」
「それで、ですか」
「うむ、姫君ならばよい」
「その場合は何もなくですな」
「関白様が跡を継がれな」
「豊臣家の天下となりますな」
「唐入りも収まり」
 そしてというのだ。
「あらためて天下泰平を磐石にする為の政が行われる」
「だからこそ」
「よいのじゃが」
「ご子息ならば」
「太閤様は変わられた」
 昌幸は顔を険しくさせて言った。
「だからな」
「お変わりになられましたか」
「大納言様がおられなくなってからじゃ」
 まさにその時からというのだ。
「一変されたからな」
「それがしはそこまでは」
「わしにはわかる」
 天下屈指の智略の持ち主と言われたことは伊達ではないというのだ。その自負もあり昌幸はこう言うのである。
「あの方は歯止めが効かぬ様になっておる」
「だから唐入りも利休殿のことも」
「ああなったのじゃ」
「では」
「若しご子息ならばな」
 茶々が産む子がというのだ。
「厄介なことになるぞ」
「左様ですか」
「その場合太閤様は必ず関白様を遠ざける」
「そしてそれが」
「天下の乱のもととなる」
 まさにというのだ。
「そうなる」
「左様ですか」
「うむ、危険じゃ」
「ではこれは」
「ご子息ならば凶兆じゃ」
 天下のそれだというのだ。
「天下のな」
「そうなりますか」
「まずいことになった」
 昌幸は難しい顔で言った。
「生まれてくる可能性は半々じゃが」
「それでもですか」
「天下はどうなるか」
「それが、ですか」
「わからなくなったわ」
「では」
「よいか、関白様は天下に必要な方じゃ」
 天下が泰平であり続ける為にはというのだ。
「だからな」
「お護りすることですな」
「それに務めよ、しかしな」
「それでもですか」
「それは家があってのことじゃ」
 真田家がというのだ。
「わかるな」
「はい、関白様をお護りしても」
「家に危害が及ばぬまでじゃ」
「それまでに留めるべきですか」
「若し太閤様に睨まれれば」
 秀吉、他ならぬ彼にだ。
「わかるな」
「はい、その時は」
「当家なぞ吹けば飛ぶものじゃ」
 秀吉にしてみればというのだ。
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