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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百二十九話 末裔
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した事を知っている。

「賄賂を贈った企業はフェザーン資本の企業だった。そして政府内部にはある噂が流れた。その企業は他の人間にも賄賂を贈っていると……。ホアン、君も知っているだろう?」
私の言葉にホアンが顔を顰めた。
「……知っている。サンフォードだ、彼に金が流れたと……、しかしよく認めたな」

「シャンタウ星域の会戦以来、フェザーンはサンフォードを切り捨てた。あれだけの敗戦だ、サンフォード家はもう役に立たない、そう思ったのだろうな。それにフェザーンも今では同盟の占領下にある。サンフォードもフェザーンを見切ったと言う事さ」
トリューニヒトが冷笑を浮かべている。いつもの愛想の良い笑顔ではない。

「当時私とトリューニヒトの間で和平を結ぶのならサンフォード議長では無理だと言う話が出た。百五十年続いた戦争を終わらせる、国民だって簡単には納得しない、余程の覚悟が要るだろう。トップがふらついては無理だとね」
「……」

「示し合わせたわけではないが、私とトリューニヒトは密かにサンフォード議長の引き降ろしを別個に図った。材料は例の贈収賄事件だ。だが帝国領出兵が決まり引き降ろしは出来ずに終わった……」
「……」

「その帝国領侵攻作戦だが、あれにはフェザーンが絡んでいるようだ」
私の言葉に皆の視線が集まる。
『どういうことです、レベロ委員長。あれはヴァレンシュタイン元帥の謀略にしてやられたのではないと?』
スクリーンに映るヤン提督が訝しげな表情を見せた。

「いや、それも有るだろう。だがフェザーンが関与したのも事実だ。サンフォードが認めた」
「……」

「当時帝国とフェザーンの関係は決定的に悪化していた。理由はフェザーンが同盟のイゼルローン要塞攻略作戦を事前に帝国に通報しなかったからだ。故意か過失なのかは分からない。だが帝国はこの時からフェザーンを明確に敵として認識するようになった」

『つまり、帝国の眼をフェザーンから逸らすために同盟を利用する必要があった?』
「そうだ、フェザーンから帝国の目を逸らしてくれと依頼を受けたサンフォードは軍部から提出された出兵案を受け取った。本来なら統合作戦本部を通せというべきものだ。一つ間違えばそれを理由に我々に責められる事になる。にも関わらず受け取ったのは彼にとっては私とトリューニヒトの退き下ろしよりもフェザーンからの依頼のほうがウェイトは重かったからだ」

思わず自嘲が漏れた。あの男は私とトリューニヒトの追及を逃れる自信が有ったのだ。だが私達はそうは思わなかった。私達の動きに恐怖したのだと思った。自分達を過大に評価したのだ。そうでなければあの時にフェザーンの関与を知る事が出来たかもしれない。そうであればあの出兵を止められたのかもしれない……。

いや無理か……。帝国とフェザー
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