暁 〜小説投稿サイト〜
落ちこぼれの成り上がり 〜劣等生の俺は、学園最強のスーパーヒーロー〜
番外編 文倉ひかりの恋路
後編 目指して行く幸せ
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さり私を捨てて他の女の子とイチャイチャしていたわけではなかったのだと思うと、少しホッとした。
「……あのさ、ひかり。俺、話さなくちゃいけないことがあるんだ」
「えっ、どうしたの? 急に改まっちゃって」
ふと、申し訳なさそうにこちらに目を向ける大路郎君に、私はキョトンとした顔になる。
さっきの件とは違う話題なのだろうか。一体どうしたのだろう?
「俺さ、院長先生……加室さんから、いろいろ聞いたんだ。お前のこと」
「……」
――そっか、聞いちゃったんだ。たぶん、私が院長室に来るまでに聞いてたのね……。
「……苦しかったんだよな。苦しんだんだよな。俺の――ために」
目を伏せて、気まずそうに絞り出された声に、私は深く頷いた。
三年前。私は大路郎君のお兄さん――船越弌郎に強く迫られて、彼の子を、瑳歩郎を身篭った。
もちろん、最初は拒否しようとした。私は路郎君が好きなのであって、そのお兄さんに好意があったわけじゃないから。
だけど、彼は私に言った。
「そんな重い女は、いずれ捨てられる」と。
その瞬間、私は彼に逆らえなくなってしまった。
花子のために、笑顔で頑張る大路郎君の姿を見てから、ずっと恋い焦がれていた。あの日、階段で彼と話す機会が出来た時は、運命だって思えた。
その彼に捨てられる。そんなの、堪えられるはずがなかった。
だから私は瑳歩郎を授かり、産むことを決意した。
初恋は叶わない、という話はよく聞くけれど……彼を手放してしまったら、もう二度と彼のような男に出会えないような気がしていたから。
鋭美も院長先生も、はじめは反対していたけれど、そんな私の決意を目の当たりにしてからは、それなりに了解してくれた。
それに、私は『母親』に憧れていた。両親がいない私にとっては院長先生が親代わりだったけれど、それでも……「家に帰ったら、暖かく迎えてくれる母親」という存在に、強く惹かれていた。
いつか幸せな家庭を築いて、自分の子供を優しく包んであげられるお母さんになりたい。そんな夢を抱いているのは、今でも変わらない。
……そう、命を授かったことは望んだわけではないけれど、瑳歩郎を産んだのは私の意志。
だから、私は大路郎君のために自分を捧げている今を、後悔なんてしていない。それだけに、私のことを気に病んでいる彼の姿を見ているのは、心苦しい。
「お前は、俺のためにそこまで尽くしてくれたんだよな。……なのに、俺は」
「大路郎君……落ち込まなくてもいいのよ。これは私が望んだことなんだから。それに、あなたが私を忘れないでいてくれたことだけでも――」
「――いいや、俺は、忘れようとしていたんだ。お前のこと」
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