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落ちこぼれの成り上がり 〜劣等生の俺は、学園最強のスーパーヒーロー〜
本編 生裁戦士セイントカイダー
第16話 溢れた感情
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族に何の相談もせず、独りで全部しょい込もうとするなんて。――でも、それ以上に驚いたわ。そして、嬉しかった」
「……嬉しかった?」
予想外の母さんの言葉に、俺は思わず向き直って目を見張る。
「お父さん――
零郎
(
ぜろう
)
さんは酷く女癖が悪くてね。浮気なんて日常茶飯事だったわ。それは、弌郎も同じ。私はこの家族から、一時の快楽なんかじゃない、本当の幸せが得られる子が出ることはないんじゃないか、って思うことがあったわね」
母さんの言う通り、俺の親父も兄貴も、とんだ変態野郎だった(親父に関しては俺がよく知る前に亡くなったから詳しくはわからないが)。
特に、弌郎は許せない。あいつを止められなかった、俺自身も。
「でも、あなたは違ったわ。間違いはするし後悔だってするけど、いつだって本当の幸せを、当たり前の暮らしをしてこれたじゃない。優しい人に囲まれて、学校の友達とも笑い合って」
「母さん、俺……」
「いいのよ。お母さん、無理にああしろ、こうしろなんて言わない。だから、あなたにとっての平和な暮らしを守るために戦うのなら、私は止めたりなんかしない」
俺の過ちも、自分への怒りも、情けなさも、全部受け止めて、母さんは俺を抱きしめた。
「――!」
ひかりや、平中が見ている中でそんなことをされたら、普通は恥ずかしがって離れようとするものだろう。
でも、俺は身じろぎもせずに、その温もりを享受した。
中学時代、ひかりが弌郎にされたことを知ったあの日から、俺の人生は大きく狂っていた。
俺は何もできず、守りたい、力になりたいと思った人を、結局は泣かせた。
そんなろくでなしが、当たり前の幸せなんて貰えるはずがない。
そう感じて、俺は母さんからも距離を置いていた。
本当なら、いつでもこうして――包んでくれたかもしれなかったのに。
寂しい、悔しい思いはしても、独りにはならなかったかもしれないのに。
「お、俺……俺はっ……!」
「あなたは確かに悪い子だったわね。でも、無理してそのままでいなくたって、いいのよ。みんなみんな、あなたの味方なんだから」
……み、か、た。
母さんが、俺の、味方。
みんな、味方……?
そうなのかな。ひかりも、平中も、桜田も。
――そして、きっと、舞帆も。
みんな、俺の味方なのか?
味方で、いてくれるのか?
何もできずにいた、俺の?
「くっ……う……!」
俺の手を優しく握ったまま、何も言わずただ天使のように微笑むひかりの顔が視界に映ると、途端にその景色がぼやけはじめた。
平中の、自分の腕白な弟を見るような、少し困った笑顔が目に入ると、ますますぼやけに拍車が掛かっていく
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