暁 〜小説投稿サイト〜
落ちこぼれの成り上がり 〜劣等生の俺は、学園最強のスーパーヒーロー〜
本編 生裁戦士セイントカイダー
第16話 溢れた感情
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あれだけのことがあって、まだ俺に笑いかけられるなんて……。

 すると、今度は平中に視線を移した。

「花子も、久しぶり。ごめんね? 中卒以来、全然連絡取れなくて」

 親しげな口調だ。本当に二人は友達だったらしい。
 ……ん? それじゃあ、俺のことが好きだって言う彼女の友達ってまさか……?

「う、ううん、いいよいいよ! そ、それよりひかりこそ大丈夫なの? 船越さんから聞い――」

 そこで慌てて口を塞ぐ。
 思わず過去を掘り返してしまったことで、俺と平中は重い空気を肌で感じることになった。

 正直、ひかりの友達云々どころじゃない。

 しかし、当のひかりは全く気にも留めない様子で優しく微笑んでいる。
 焦るこっちが恥ずかしいくらいに。

「――そのことでね、大路郎君に話があるの」

「話?」

 俺が聞き返すと、ひかりの後ろから何か物音が聞こえた。
 なんだろう、と俺が首を傾げると、そこから小さな男の子がひょこっと顔を出してきた。

 どういうわけか、俺の――セイントカイダーのソフトビニール人形を持っている。

「……弟さんか?」

「違うよ。――ほら、おいで瑳歩郎(さぶろう)

 他人の気がしない名前で呼ばれた、その瑳歩郎という二歳か三歳くらいの男の子は、ニコニコしながらひかりにしがみつく。

 まるで、親子のような絵面だ。

「瑳歩郎……?」

「うん。あの時、授かった子。覚えてる?」

「――なっ!?」

「えええっ!?」

 俺は思わず傷の痛みも忘れて立ち上がりそうになる。

 ――あの時って、中学の卒業式の!?
 そんなバカな、弌郎の息子だと!? だって、あいつ、「堕ろす」って……!

 驚愕のあまり動けなくなる俺と平中を交互に見遣り、ひかりは苦笑しつつ、俺の手の甲に優しく手を添えた。

「怖かった。すごく怖かったよ。どんなことをされるのか、どんな目に遭うのか、全然想像つかなかったから。普通に赤ちゃんを産むより、ずっとずっと、怖かった。だから逃げ出したの。そして、行き着いた病院で、この子を産んだわ」

 ――俺は、バカだ。

 こんなにひかりが苦しんでるのに、俺は今まで何をやってたんだ?

 舞帆に尻を叩かれながらも、それなりに充実した学園生活を送っている間、ひかりがどんな辛い思いをしているのか――彼女を忘れた日なんてなかったはずなのに。

 ひかりも、舞帆も、俺のせいで苦しんで、泣いて――なんだよ、そればっかじゃないか。
 俺、何の役にも立っちゃいない。

「交通事故で両親もいない、身寄りのなかった私を育ててくれた加室孤児院の先生や、同じ孤児の女友達には反対された。それでも、私は産むことを選んだの。――なんでか、わ
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