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落ちこぼれの成り上がり 〜劣等生の俺は、学園最強のスーパーヒーロー〜
本編 生裁戦士セイントカイダー
第13話 更生の始まり
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んは、そこんとこわかってんのか?」

「そこだけはわかってるはずよ。その上で、企画を決行するつもりでいる。『桜田家と宋響に仇なす者は、桜田家で倒す』ってね。それがどれほど危険で不可能に近いか、あの人はわかってないのよ、その一番大事なところを……!」

 先程から薄々伝わって来ていた達城の怒りが、いよいよ明確に形を現わしてきた。

 娘が背負うリスクを承知の上で、家のメンツのために危険な立場へ置こうとしている、夫だった男への怒り。

「……だから、私はあの人と別れたの。セイントカイダーの部品と設計図を持って、ね」

 怒りを少しでも吐き出すことで、少しは気が鎮まったのか、達城は一息つくと椅子に座ってこちらに向き直る。

 その表情は、先程まで元夫への怒りを現わしていたそれとはうって変わり、どこか諦めたような、脱力感を思わせる印象になっていた。

「だけど、それももう限界。ここをあの人が突き止めてしまうのは時間の問題だわ。そうしたら、結局あの人の思惑通り、舞帆は危険な時期の中でヒーローになる道を迫られてしまう」

「そんなことって……!」

「だから、もし舞帆が危険な戦いに巻き込まれても、支えてくれる誰かがいてあげれば、きっとあの娘も少しは救われる。だから、あなたを呼んだの」

 ヒーロー業界の名門が見せた、不快な暗部。

 それを見せ付けられた俺の心は、ぶつけようのない怒り一色で、濁流のようにうごめいていた。

「もしあなたさえ良ければ、あの娘の戦いを、事情を汲んで、支えてあげて欲しいの。私じゃあもう、あの娘を守れないから」

 達城は机に散乱していた資料の山から、数札の一万円札を差し出した。手付金のつもりか。

「これは話を聞いてくれたお礼。事情を知ってくれる人が一人いるだけでも、きっとあの娘は幸せ――」

「ざッけんなァッ!」

 その瞬間、俺は地上まで響き渡るほどの勢いで、ダムに溜まった全ての水を解放するように叫んだ。

 気が付くと、達城の手にあった万札も叩き落としている。

 思わぬ罵声に目を見開く彼女に、俺はお礼代わりに思うままの感情を言葉にぶつけた。

「幸せ? あいつが幸せに? なれるわけないだろ! 俺なんかが一人ついたくらいで、あいつが幸せになんてなれるか!」

 俺が感情のカケラを言葉にするだけで、部屋がビリビリと振動する。
 しかし、そんなことに構っているゆとりもない。

「あんたの願う娘の幸せってのは! 娘の戦いがたった独りにならないことなのか!? 違うだろ、もっと見苦しいくらい欲張ってみたらどうなんだ! そんな俺の髪の色くらい中途半端なもんじゃないだろ、あんたの願いは!」

 感情に肉体の操縦を任せた俺は、達城の両肩をガシリと掴み、手に力を込める
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