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落ちこぼれの成り上がり 〜劣等生の俺は、学園最強のスーパーヒーロー〜
本編 生裁戦士セイントカイダー
第13話 更生の始まり
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たあの姿は、ひかりの優しさを思い起こすには充分過ぎた。

 決して、ひかりの代わりなんかじゃない。
 彼女を忘れないために、今目の前にいる彼女も忘れないために、俺は提案する。

 かつて円満に果たせなかった、彼女との約束を。

「……名前で呼び合え。そしたら言うこと聞いてやるよ」

「え?」

「いや、だから名前だよ」

 俺の発言が余程意外だったのか、女は俺の案に応えようともせず、鳩が弾道ミサイルを食らったような顔をしている。

「名前で、呼び合うの? 私と?」

「ああ。お前、名前は?」

「そういえば、自己紹介もまだだったわよね。私は桜田舞帆。あなたは――船越大路郎君よね?」

「そうだ。俺はお前を舞帆って呼ぶ。だから、お前も大路郎って呼んでいい」

 女――舞帆は、少し困った顔をすると、頬を赤らめた。

「ごめん……私、男の人を名前で呼ぶのは、家族か、家族になる人じゃないとダメだって言われてて」

 つまり、他所の男を名前で呼んでいいのは旦那だけってことか。
 コテコテに厳格な家庭なんだな。

「じゃあ、俺が勝手に舞帆って呼ぶ。お前は好きなように呼べよ」

「うん……船越君」

 あの約束を再現しきれなかったのは歯痒いところもあったが、不思議とそれほどもやもやとはしなかった。

 舞帆にひかりの面影を重ね、彼女を守りたいと願ったから、何が得るものがあったのかもしれない。

 もしかしたら……もしかしたらだが、舞帆を守れたことで何かの恩赦を得られるとしたなら……俺はもう一度、誰かを好きになっても、いいのかもしれない。

 それから、更正の第一歩として髪の染め直しに臨んだわけだが。

「くそったれ……」

「やっちゃったわね……なんだか中途半端」

 マジメになった証として自分で染め直そうとしたところ、しくじって半端な髪になってしまったようだ。

 まるで赤い髪に墨汁をぶちまけたような頭になってしまっている。

 端々に赤みがかかり、さながらメッシュのような有様だ。

 俺は退院して家に帰って以来、その頭で学校に通わなければならなくなった。

 それでも、グレた俺や女に溺れた弌郎のせいで老け込んだ母さんに、これ以上迷惑は掛けられないため、授業にも(今までよりは)マジメに取り組み、髪を染める前までは成績が回復した。

 さらに舞帆主導の(更正のためと称した)雑用オンパレードが功を奏したのか、俺を不良だと恐れて近付かなかった他の同級生達とも、次第に打ち解けていくことができた(その過程で成績が逆戻りしたが)。

 そうして一年の夏から二年の秋に掛けて、丸一年近くに渡る更正プロジェクトをこなした頃。

 俺は、達城朝香と出会った。

 △

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