暁 〜小説投稿サイト〜
落ちこぼれの成り上がり 〜劣等生の俺は、学園最強のスーパーヒーロー〜
本編 生裁戦士セイントカイダー
第9話 暴かれる過去
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えてよぉ!」

 綺麗な髪を振り乱しながら、舞帆は弟を遮って俺の両肩に掴み掛かる。
 平中が慌てて止めに入るが、その力が緩む気配はない。

 その様子に何かしらの無力感を感じたのか、平中は力無く椅子にへたり込むように座った。

「あんなに傍にいたのに、何も知らなくて何もできなくて……これじゃ、ひかりに合わせる顔が無いよ」

「――あ?」

 今度は、俺の顔が凍った。

 時が止まったように、意識はあるのに、体が動かない。

 思い出したくない、それでいて忘れたくもない記憶。

 それが今、たった一言で呼び起こされようとしていた。

 俺にとって、良くも悪くも忘れられない、彼女が。

「――!」

 無意識のうちに力ずくで舞帆の腕を払いのけると、平中に真顔で迫る。

「ちょっと待て。『ひかり』だと?」

「え? は、はい。私の友達で、その……あなたのことを教えてくれた……」

「文倉、ひかりか」

 俺が出したフルネームに、平中が目をしばたかせる。それは、やり取りを見ていた桜田姉妹も同じだった。

「え、何? 誰よ、文倉って!?」

「船越さん、僕達にも説明して下さい」

 ……患者を労る気持ちってのが無いのか、こいつらは。

 ――いや、問題はそこじゃない。

 俺が、セイントカイダーになったこと。それが舞帆の身代わりを意味していたこと。

 そして、「文倉(ふみくら)ひかり」のこと。

 もしかしたら、全てを吐き出すいい機会なのかも知れない。
 話すことで、何かが楽になるとしたら。

「……」

 俺は自分に注目する周囲を一瞥し、一息つくと、窓から見える遠くの景色に目を向けた。

 ここから見たらミジンコのように小さく見えるスーパーヒーロー評議会のビルくらい、遠い記憶。

 忘れられない、忘れたくない、そんな気持ちをないまぜにして封じていた、俺の幸せと不幸せが同居する過去。

 そのパンドラの箱を、俺は今、こじ開ける。

「……俺の、コト、かぁ」

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