第三章 [ 花 鳥 風 月 ]
六十三話 百鬼夜荒 陸
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・》事情等知った事では無い。
放っておけば勝手に単身で敵砦に突撃する位はやっていただろう。
だがそんな事をされると虚空の都合としては困る。
そこで彼は綺羅に幽香の援護をするように頼んだのだ。
それは綺羅に幽香のお目付役をさせる――――と言う事では無く………
幽香に『足手纏い』と言う枷を付ける為だった。
足手纏いと言っても、それは幽香基準の話であり綺羅自身の実力は本人が自覚している以上に高い。
博麗の血筋はそれなりに古く、何時から結界術師として生計を立てていたのかは分からない。
結界術師としてはそれ程有能な一族では無く、“可も無く不可も無く”と言うのが正直な評価であった。
しかし綺羅の代でその評価は一新される事となる。
強固な結界術、強力な封印術、卓越した対魔術式等を次々に構築し瞬く間に『博麗』の名は周囲に広まっていった。
遂には京の都を統べる帝直属の陰陽組織から召し上げの打診も来た程である。
だが綺羅はそれを断り、生まれ故郷の地に留まり地方の人々を驚異から守り続ける道を選んだのだ。
災厄から弱き人々を護る――――それが綺羅の信念であり誇りである。
彼は希代の天才である以上に――――何よりも『お人好し』だったのだから。
しかし綺羅が虚空の意図に気付かず善意で幽香の援護をしたとしても、幽香自身が綺羅を気にかけず自由に動いてしまえばその措置の意味が無くなる。
だが幽香には綺羅を見捨てられない理由が存在した。
幽香の花畑は現在、綺羅が張った結界によって保護されている。
彼女の性分は基本的に身勝手である――――が、物事に対してきっちりと筋を通す性質も持っている。
他者からどう見えたとしても、彼女にとって花畑は姉妹と遜色ない程……大切な譲れないモノ。
経緯がどうあれ、その大切なモノを“守ってもらっている”と言う事実には報いないといけない。
そして…この戦場で綺羅を孤立させれば間違いなく彼は死ぬだろう――――それが幽香が綺羅と共に戦っている理由。
自分の都合の為に躊躇無く綺羅のような人物を利用する虚空に、幽香は確たる不信感を感じている。
薄々感じていた事ではあったが、ここまで躊躇が無いとは予想以上だった。
背中合わせの幽香と綺羅の周囲には、何時の間にか無数の妖怪達よって包囲が敷かれ、今正に襲い掛からんとしていた。
二人がその襲撃に備えようとした、その時――――
上空から照らしていた月明かりが突然消え、闇が深くなる。
地上に居た者達全てが、『何事か?』と天を仰ぎ
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