第三章 [ 花 鳥 風 月 ]
六十三話 百鬼夜荒 陸
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幽香を侮ってはいなかった。
そんな風に二人を見ていた妖怪達の目の前で突如、幽香の姿が消える。
彼女の動きを追えた者は極一部であり、憐れにも幽香の姿を見失っていた内の一匹である巨猿の妖怪が背後に現れた幽香に首を掴まれる。
巨猿が状況を把握する間も無く、幽香は巨猿を軽々とナハトへと向け投擲した。
矢と化した巨猿の速度は驚異的で瞬きすら許さない程であったが、ナハトは微動だにせず巨猿が飛来する方向に砂鉄を高速で円盤状に回転させる事で受けとめた――――否、削岩機の如く磨り潰した。
しかし幽香の狙いはナハトが自分以外に意識を割く事であり、投擲した巨猿がどうなろうと関係が無かった。
幽香の目論見は的を得て、ナハトの頭上を取った彼女は彗星の如く滑空し、彼の翼の根元へと極彩色を纏った手刀を打ち込む。
しかし幽香の手刀が彼の鱗を貫く、と思われた瞬間――――ナハトの鱗の内側から砂鉄が濁流となって溢れ出し、幽香の手刀を飲み込んだ。
しかも手刀を打ち込んだ部分だけが鋼の如く固まり、砂鉄の濁流は滝の如く地上へと向け幽香ごと流れ落ちる。
「ッ!このッ!舐めた事をッ!」
悪態を吐く幽香を嘲笑うかの様に、地上に落ちた濁流はそのまま沼の様に集まり、彼女の四肢に纏わり付くと鉄の様に硬質化する事で動きを封じてしまう。
強引に拘束を破壊しようとする幽香の背後に影が迫る。
茶色の体毛に被われた筋骨隆々な牛妖怪が、自身の身の丈ほどもある巨大な鉄鎚を上段から幽香に向け勢い良く振り下ろす。
流石の幽香と云えども満足な防御がとれなければ致命傷に成りかねない、その一撃は――――
彼女を覆う様に発生した山吹色の光によって完全に遮られ、更にはその一撃により光の壁に起きた波紋が、まるで逆再生の様に集まり爆光し牛妖怪を吹き飛ばした。
「大丈夫ですか!幽香さん!」
現れたのは幽香と共にこの一角を任された博麗 綺羅。
「えぇ大丈夫…よッ!!」
綺羅に答えるついでだと言わんばかりに幽香は自身を拘束していた砂鉄の固まりを粉微塵に粉砕する。
「あまり御一人で無茶をしないでください。
微力ではありますが僕でも補助位は出来ますから」
「……分かってるわ、ごめんなさいね」
真摯な綺羅の言葉に対し、幽香の返答と態度は見て取れるほどに素っ気無なかったが生粋と呼べる位のお人好しである綺羅は然程の憤りも感じていなかった。
実の所、この二人が虚空の指示で一緒になっているのには訳が有り、綺羅は気付いていないが幽香は虚空の意図を理解していた。
幽香にとっては目的は百鬼丸であり、戦場に居るその他の妖怪連中や虚空|の《
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