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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百二十八話 光明
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何も知らずに利用された……。単純なのは必ずしも悪い事じゃないがフェザーンのような場所では悪でしかない……。
「同盟の第三艦隊もフェザーンも、その件は同盟本国には伝えていないようです」
「伝えていない?」
「真相が明らかになるまでは調査中、そういう事のようですね。このままで行くとアラルコン少将一人が責任をとる事になりそうです」
ボルテックが苦笑交じりに事件の行く末を占った。さて、どうなるかだな……。同盟本国の眼を欺き続ける事ができるのか否か。欺かれるようだと同盟は危ういだろう。昭和の日本軍と政府のようになりかねない。帝国にとっては望むところだが……。
まあ、それはさておき一つ気をつけなければならない事がある。ボルテックにはフェザーンに情報源が有るということだ。それも自治領主府内部に情報源はある。ペイワードに不満を持つ人間が接触を図っているのだろう。こちらに情報を渡すだけなら良いが、彼自身がフェザーンの混乱を利用しようとするなら危険だ。キスリングに、レムシャイド伯にも伝える必要が有るだろう。
「ケッセルリンク補佐官はどうしています?」
「真面目に仕事をしております」
“真面目に”と言う言葉がおかしかったのだろう、ボルテックが軽く笑った。俺も笑った。
「妙な動きは有りませんか?」
「有りませんな。用心しているのかもしれませんが、このオーディンでは彼は孤立しています。動かないのではなく動けないのかもしれません」
多分そうだろう、そうであれば問題は無い。彼を利用しようとする人間も少なくなるし、危険性も減る。
そろそろボルテック、ケッセルリンクにも協力してもらうべきだろう。ボルテックには同盟領遠征後には同盟との間で通商を取り扱って欲しいと頼んだ。今の様子なら断わらないだろう。他の省とのかかわりもある、話し合ってもらう時期が来ている。それとフェザーン占領後、帝都遷都までの統治についても彼らの協力が要る。リヒテンラーデ侯には一度話して了承を得ているがあれは内乱前だ。もう一度話しておくべきだろう。
ボルテックが捕虜交換について訊いてきたのは弁務官府に戻ると言って席を立った直後だった。
「捕虜交換は何時頃行なわれますか?」
「年明け早々には行なわれるでしょう」
俺が答えるとボルテックは嬉しそうに笑った。
「捕虜が交換されれば、人々の心も明るくなります。消費も増えるでしょうし経済効果も期待できるでしょう。来年は良い年になりそうです」
「そうですね。今の帝国にとっては追い風になるでしょう」
俺とボルテックは笑いながら別れの挨拶を交わした。
先月の下旬、軍務省では捕虜交換についてタスクチームが作られた。彼らが今捕虜交換をどのように進めるかを検討している。今月中にはまとまるだろう。後は同盟側と詰めるだけだ。
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