暁 〜小説投稿サイト〜
提督はBarにいる。
独逸空母の憂鬱
[1/3]

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話
『グラーフ、今晩は飲みに行かない?私の奢りよ?』

 日常化した訓練の後、ビスマルクにそう声をかけられた。……あぁ、自己紹介が遅れたな。私はドイツ生まれの航空母艦、グラーフ・ツェッペリンだ。艦娘の運用を学ぶ為に、今はここ…ブルネイにある日本海軍の鎮守府で、ドイツ艦の艦娘達と日夜任務に明け暮れている。

『あぁ、たまには良いだろう。それで、どこに飲みに行く?マミーヤか、それともホーショーの所か?』

 久方ぶりに交わすドイツ語での会話。祖国ドイツを思い出すようで少し感傷的になるが、今は大事な任務中だ。だが、たまには贅沢するのも良いだろう。

『いいえ、今日はそのどちらでも無いわ。提督のお店よ。』

 その言葉を聞いて少したじろぐ。

『提督の店か?あそこはちょっと……』

『何故?あのお店お酒の種類は多いし料理も美味しいしで問題なんて無いと思うけど?』




 この鎮守府の司令官である提督は少々……いや、かなりの変わり者だ。仕事は出来る…それは間違いない。だが、勤務時間後に執務室を飲食店に改装し、夜な夜な部下である筈の艦娘達と飲み明かし、午前中の執務は秘書艦に任せきり。その上複数の艦娘と婚姻関係まで結んでいる。いい加減に仕事をこなす軽薄な男……ここの提督に抱いた私のイメージはこれだった。

『あの提督は……あの男はいい加減過ぎるとは思わないか?ビスマルク。仕事の才覚はあるのかもしれないが、軽薄に過ぎると思うのだが。』

 私がそう言うと、ビスマルクは顎に人差し指を当ててう〜ん、と考え込んでいた。

『それはどうかしらね?貴女はまだあの人と付き合いが浅いもの。まずはあの人の料理を食べて、言葉を聞いてから判断しても遅くないとは思わない?』

『む……それは、そうかもしれないが。』

『なら決まりね!貴女はとりあえず汗を流して来なさい。私はその間にレーベやプリンツ達にも声かけて来るから。』

 それじゃあね、とだけ言い残してビスマルクは去っていった。その左手の薬指には鈍く銀に光る指輪が嵌められていた。




 浴場に着くと、ちょうどアカギとカガが入浴する所だった。

「あら、グラーフさんじゃないですか♪」

「やぁアカギ。貴女達も今から入浴か?」

「えぇ、久し振りに他の娘達の訓練に駆り出されたもので。」

 そう言いながらカガが左手の薬指から指輪を外す。……そういえば、アカギとカガもあの男と婚姻関係を結んでいたな。複数の女性と婚姻関係を結んでいる事を不誠実だとは思わないのだろうか?いい機会だ、尋ねてみよう。

「はぁ〜……生き返りますねぇ♪」

 そういえば、日本式の軍に来て一番驚いたのがこの入浴文化だったな。ドイツではサウナが一般的で湯を張った浴槽に浸かるという事
[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ