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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百二十七話 亡霊
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対してラープは中立国家フェザーンを創る事を提案したのでしょう。当時の同盟の為政者はそれに乗りました。中立国家フェザーンを創ることで帝国の侵攻路をイゼルローン一本に絞る……」
「馬鹿な、そんな話は聞いた事が無い。有り得ない話だ」

ホアンが吐き捨てるような口調で否定した。同感だ、私もそんな話は聞いた事が無い。しかしグリーンヒル総参謀長は躊躇う事無く話し続けた。
「同盟はラープに協力しました。地球は人口も少なく、資源も無く、汚染された大地しかありません。フェザーンを創る財力、それを帝国に認めさせるだけの賄賂、それらは同盟で用意されたのでしょう」

「どうやって用意したのだね」
問いかけた私の声は掠れていた。聞きたくないと思う気持と聞きたいという気持が自分の心の中で鬩ぎあっている。聞けば後悔するだろう、しかし聞かなければもっと後悔するかもしれない。

「ラープは同盟政府の非公式な援助の下、資金を調達したのだと思います。交易、相場、政府の援助があれば大金を儲けるのは難しくありません。ラープは同盟で得た資金を貴金属、宝石類に代えて帝国に持ち帰りました。そして帝国マルクに変え、フェザーン設立のために使用した……」
「……馬鹿なそんな話は聞いた事が無い、もう一度言うがそんな事は有り得ない」

「ホアン委員長、同盟政府がフェザーン成立に関わった事は一切が伏せられたのです。もしこの事実が帝国に知られればフェザーンはあっという間に帝国によって滅ぼされました。そしてフェザーン回廊から帝国軍が押し寄せてきたはずです」
「……」

「フェザーンは成立以後、弱体な同盟に対し協力をし続けました。当時の同盟政府の為政者にとってはそれで十分だった。そしてフェザーン、地球にとっても帝国、同盟の両者を共倒れさせるためにはそれが必要だった……。ヴァレンシュタイン元帥はそう考えています」

グリーンヒル総参謀長の話が終わってもしばらくは誰も口を開かなかった。ややあってトリューニヒトが話し始めた。
「ヴァレンシュタイン元帥の推論か……。論理としては成り立つのかもしれんが証拠は何処にも無いのだろう」
ホアン、ネグロポンティが頷く、私も同感だ。証拠は何処にも無い。

「内乱の最中にヴァレンシュタイン元帥の暗殺未遂事件がありましたが、その実行犯の一人に地球教徒がいたそうです」
「!」
グリーンヒル総参謀長の言葉に応接室の空気が緊張した。

「しかし一人だろう。偶然と言う事も考えられる」
私はトリューニヒト達の顔を見ながら話した。彼らも私に同調するかのように頷いている。多分、フェザーンの成立に同盟が関与したなど認めたくないのだろう。だがグリーンヒル総参謀長の言葉が私達の思いを粉砕した。

「内乱終結後に起きた暗殺未遂事件でも地球教徒が関与していたそうです
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