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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百二十七話 亡霊
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。フェザーンが望めば和平を作り出すことも出来たかもしれません。恒久的なものにはならなかったでしょうが五年や十年の平和は作り出せた可能性はある。そうなれば拝金主義者と蔑まれる事も無かったでしょう。フェザーンの地位も今より遥かに安定したはずです」
「……」

皆言葉が無い。確かにその通りだ、和平は可能だったかもしれない。平和と戦争が交互に続く世界か……。そうなれば今のように反帝国感情も強いものではなかったかもしれない。そしてフェザーンは中立国として確固たる地位を築いただろう。

「それに戦争が続けば経済活動は低下します。何より戦争によって人が死ねばそれだけ市場が小さくなる。かつて銀河には三千億の人間がいましたが今では四百億しかいません。戦争が続けば続くほどフェザーンにとっては厳しい未来が待っています。フェザーンは何故それを放置するのか?」

確かにそうだ、何故フェザーンはそれを放置する? 財政委員長だから分かっている。人が減れば税収が減る、税が取れる人間が減るのだ。それはフェザーンも同じだろう。人が減れば市場が小さくなる、何故放置する?

「……なるほど、確かにグリーンヒル総参謀長の言う通りだ。フェザーンは通商国家としては不自然なところがある……。その原因が地球と言う事か……。話を戻そう、ヴァレンシュタイン元帥はフェザーンと地球の関係をどう見ているのかね」

トリューニヒトの言葉にグリーンヒル総参謀長は頷いた。
「マクシミリアン・ヨーゼフ帝の後、コルネリアス一世が帝位に就きます。そして大親征が起きますが、この戦いで同盟軍は二度に亘って大敗北を喫しました。オーディンで宮中クーデターが発生しなければ宇宙はコルネリアス一世によって統一されていたでしょう」

「まさか、その宮中クーデターも地球の仕業だと言うのではないだろうね?」
「分かりません。ヴァレンシュタイン元帥は其処までは言ってなかったようです。しかし可能性としては有ると思います。余りにも同盟に都合の良すぎるクーデターです。偶然とは思えません」

トリューニヒトの質問は冗談だったのかもしれない。しかしグリーンヒル総参謀長は生真面目に答えた。そしてその話を笑って聞くことの出来ない私達がいる。話が進むにつれて自分の顔が強張っていくのが分かる。

「大敗北を喫した同盟は恐慌に駆られました。あの当時の事は良くTVで放送されますが、軍の再建が思うように進まず苦労した事がわかっています。そんな時に地球はレオポルド・ラープを使って同盟政府と秘密裏に接触したのだとヴァレンシュタイン元帥は考えています。イゼルローン回廊以外にも使える回廊が有ると言って……」
「……」

「もし帝国が両回廊から攻め寄せてきたらどうなるか? 当時の同盟政府にとっては悪夢だったはずです。頭を抱える同盟の為政者に
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