Side Story
少女怪盗と仮面の神父 37
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めた。
「裁きの時間だ。心優しき、高貴なる罪人達」
一歩右へずれて立ち。
神父と暗殺者の頭上で、左腕をまっすぐ横に伸ばして微笑む王子。
彼は、頑是無い幼子へ言い聞かせるように、優しく告げる。
「対象は、アルスエルナ王国とバーデル王国に無断で国境を越え、国家転覆並びに世界規模の混乱と大虐殺を策謀・実行した大罪人、暗殺者イオーネ。このリアメルティ領を護る卿らの手で、即刻粛清せよ」
「…………??」
ハウィスの肩が大きく跳ねた。
見開いた瞳が、唇が、体が、目に見えてガタガタと震えだす。
「あは。愚かな殿下。私達暗殺組織がアルスエルナの一地方を狙い定めたと知らせた時点で、バーデル軍は私達の行動に疑問を抱いているわよ? 突然アルスエルナ王国に執着を見せ始めたのは何故かとね。そんな組織の首領をお前達が殺せば、どんな罪状を持ち出したって、更なる疑惑を育てるだけ」
「私達が、首領を殺せば、な」
きっぱりと言い捨てる王子に、イオーネの眉が片方跳ねた。
「バーデル軍に売ろうとしてたのは、シャムロックに付随するアルスエルナ国内の現状と、義賊を匿う王族に混乱する社会情勢ともう一つ、バーデルを荒らした暗殺組織の現首領が、義賊被害者のアルスエルナ人であること……だろ? つまり、バーデルの連中は、お前個人の顔も素性も、現在の首領がお前であることも知らない。なら、バーデル軍にこの現場を見られなきゃ、後はどうとでもなる」
「バーデルは、容疑者の身柄引渡しを要求するわよ。隠し切れるとでも?」
「他人の家に迷い込んだ『飼い犬』を回収する為には許可と時間が必要だ。犬が優秀であればあるほど、調べる手間が増えて大変なんだよな。お互い」
エルーラン王子が、引き戻した左手の指先で自身の胸元をとんとん叩く。
甘い香りを放つ涙滴型の小瓶が入っている胸元を。
「…………っ!」
一旦は落ち着きを取り戻した銀色の目に、再び動揺の影が走る。
「三度は言わない」
歯噛みするイオーネを気にも留めず、王子の目は震え泣く母子を捉え
そして
「やれ」
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