Side Story
少女怪盗と仮面の神父 37
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きに制御できると本気で思ってるの?? コイツの本性は……っ」
「できる。多少の問題は否定しないが、アーレストは現世のすべての生命を心から愛しているからな。簡単に壊れたりはしない」
立ち上がり、イオーネを覗いたままぴくりとも動かないアーレストの頬に左手を当て、柔らかく微笑むエルーラン王子。
その、赤子をあやすような優しい眼差しが。
イオーネの顔を更に引きつらせた。
「狂ってる……アリア信仰もお前達アルスエルナの王族も正気じゃない!」
「はっはっはっ。個人の都合とお気持ちで国をぶっ壊そうとする暗殺者には言われたくないぞおー……っと。そういやさっきも、腐った塵屑とか散々な形容してくれてたか。ま、どっちも否定はしないが。むしろ誉め言葉?」
「……どういう意味よ」
「生物の意思は常に個々で千差万別、変幻自在だ。海へ向かって集い流れる川でありながら、ふとした拍子に飛び跳ね土に吸収されたり蒸発したりする水粒でもある。右を向いた瞬間左が乱れる群集を列としてまとめ上げるのに『純粋なだけのイイコちゃん』はまるっきり役立たずって意味」
イオーネの瞳がおもむろに大きくなるのを見て、王子は笑みを深める。
「人間はさ、自分にとって都合が悪くなる要因がちょこーっとでもあると、一も二もなく拒否態勢を整えるんだよ」
たとえば、民衆が謳う『美徳』ってヤツはいつでも『真っ先に身を削って皆を助ける英雄様』だろ?
勇者が矢面に立ち苦しんでる姿に同情はしても、勇者に寄り添い、労り、感謝を捧げるのは、必ず結果を出した後。
全世界の為にどれだけ心を砕き、命を懸けても、各自にとって良い結果を出せなきゃ『勝手に頑張って勝手に死んだ、名も知らぬ愚かな誰か』だ。
恐怖・遠慮・謙遜・足手まといを理由に『自分達を護る戦い』を、勇者へ丸投げして逃げた、そういう卑怯な自分とは向き合いたくないんだろうな。
だから、勝利した勇者に対しては、満面の笑顔で「よくやってくれた」と持て囃すが、敗北した勇者に対しては、それ見たことか、身の程知らずがと徹底的に扱き下ろし、自身の『戦わなかった選択』を正当化する。
これ、政治でも同じでな。
任された領地とそこに住むもの達の生活を保ちつつ外敵との激しい攻防を毎時毎分繰り広げる領主達に、領民は『税を取りすぎだ、節約しろ、交通の便を良くしてくれ、規制を緩和しろ、いいやもっと締めろ』と、それぞれが身を置く世界の主観に基づき、自分自身と己の身内にとってだけ都合が良い主張を突き上げてくるんだ。
それが叶わないと知るや自分の意見が通らないとは裏があるに違いない、自分が望む結果を出せ
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