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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百二十六話 安らぎ
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ヴァレンシュタイン……。その名前に皆が不安そうな表情を見せた。厄介な相手だ、同盟軍にとって最大の脅威と言われる相手がヤンに話を持ってきた。
「危険では有りませんか? そのフェルナー准将という人物が暗殺者だという事もありえる。第一、同盟がイゼルローン要塞を攻略したのは敵の司令官を捕虜にし司令部を抑えた事が原因です。今度はあちらさんが同じことを考えても可笑しくは無い」
アッテンボローの言葉にシェーンコップ准将がニヤリと笑った。それをムライ参謀長が不機嫌そうな表情で睨む。また始まった、いつもの事だ。
「まあ大丈夫だろう。今の帝国は国内の体制を整える事を優先させているようだ。少なくとも捕虜交換を実施するまでは攻勢をかけてくる事は無いと私は考えている」
ヤンの言葉に皆が頷いた。ムライ参謀長も反論はしない。ヤンの判断が下されるまでは色々と意見を言うが下された後は従う。これもいつもの事だ。
「アッテンボロー少将、彼らを迎えにいってくれ。三百隻ものお客さんだ、ユリシーズ一隻ではニルソン中佐も不安だろう」
「はっ」
五時間後、イゼルローン要塞の外には帝国軍の三百隻、それを監視するアッテンボロー率いる二千二百隻がいた。司令室のスクリーンには帝国軍三百隻の中から一隻の連絡艇がイゼルローン要塞に向かって進むのが見える。もし帝国軍がこちらを騙したときはあの三百隻は一隻残らずアッテンボローに殲滅されるだろう。
「帝国軍の艦艇は全て新造艦です」
オペレータが驚いたような声を出した。確かに妙だ、わざわざ新造艦をこちらに見せるのは何故だ。思わずヤンを見た。俺だけじゃない、皆がヤンを見ている。
「よっぽど大事な使者らしいね」
なるほど、そういうことか。
連絡艇が入港し、一人の帝国軍人が司令室に現れた。どうやらこの男がフェルナー准将らしい。シャープな印象を与えるが何処となく油断できない不敵さが漂う。どこかシェーンコップ准将に似ているだろう。
「アントン・フェルナー准将です」
「ヤン・ウェンリーです。私に話があるとのことだが」
「ヴァレンシュタイン司令長官から直接ヤン提督に話すようにと言われています。これは提督への親書です」
そう言うとフェルナー准将は懐から封筒を出した。グリーンヒル大尉が受け取りヤンに渡す。ヤンが読み始めるのを見ながらキャゼルヌ先輩が口を開いた。
「話は此処ですれば良いだろう、我々も聞かせてもらう」
「残念ですがそれは出来ません。ヴァレンシュタイン司令長官からはヤン提督だけに話すようにといわれている」
「しかし」
「キャゼルヌ少将、フェルナー准将の話は私だけが聞く。准将、付いて来てくれ、私の部屋で話そう」
そう言うとヤンは司令室を出た。表情が厳しい、どうやら親書には重要な事が書か
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