第43話『災厄』
[1/7]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
門から離れているにも拘らず、ハッキリとした音で耳に入ってくる雄叫び。それは恐怖を揺り起こし、命の危険を掻き立ててくる。
間違いない。魔獣だ。
「うっせぇな・・・つか、どうなってんだよ」
まだ耳にある残響を振り払い、ラグナは困惑を乗せて言った。彼だって雄叫びを上げた魔獣の正体は掴んだはずだ。
『人喰いのウォルエナ』。それが、今王都を襲った犯人であろう。
先程、晴登とユヅキが倒したウォルエナは、実は群れがバックに潜んでいたということだ。
では、なぜ奴は単体で現れたのか。……よくわかんないけど、たぶんたまたまはぐれたとかではなかろうか。
「あいつ…一匹じゃなかったのか」
「とすると、最初から周りを囲まれていたのかな。それなら嫌な気分だね」
店から外を見て一言。
ちなみに窓から見える景色はあくまで大通り。門付近の様子は確認できない。
だが、ウォルエナが王都に来たというのが判明した以上、不毛な解析は後回しだ。
まずは奴らの魔の手から逃れなければならない。
「今大通りに出ると奴らと鉢合わせる。裏口を使うぞ」
「「はい」」
ラグナの意見に返事し、裏口へ向かう。
幸い、裏口から出た路地裏には特に異変はなさそうだった。
出待ちを予想して構えていたが、杞憂に終わる。
「ここからどうやって?」
「まだウォルエナの様子を見てないから何とも言えねぇが・・・やっぱ西か東を目指すしかないだろう」
晴登の質問にラグナは答える。
西か東しか選択肢がないのは、薄々気づいていた。何せ北は大討伐の真っ最中。そこに逃げ込むなんて、まさに『飛んで火に入る夏の虫』だ。
ただ面倒なことに、西や東に行くのに少々問題がある。
というのも、王都で大通りを使わないとなると、後は網の目のような裏路地を進まないといけなくなるのだが、如何せん複雑なのだ。いかに王都に慣れたユヅキやラグナでも、この迷宮を迷わずに進めるかは賭けだと思う。
加えて、王都全体が森だけでなく高い壁で囲まれているのだ。おかげで路地裏を行こうが、結局は誰しもが門へと辿り着いてしまう。端的に言えば、王都の出入り口が東西南北の四ヶ所しかないということ。
もし全てを敵に塞がれていれば・・・チェックメイトだ。王都の中で地獄の鬼ごっこのスタートである。
ウォルエナが北だけでなく南にもいるなら、東西にいないとも限らない。よって移動には細心の注意が必要なのだ。
「にしても意外だぜ、お前ら。ウォルエナが街中入ってきてるってのにそんなに冷静でよ」
「さっき経験したから慣れたんでしょうね。嬉しくないですけど」
「そう言うラグナさんは恐くないの?」
晴登が考え込むと、ラグナが口を挟んでくる。
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ