暁 〜小説投稿サイト〜
魔法少女リリカルなのは ViVid ―The White wing―
第三章
三十一話 刹那の妙技
[1/15]

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話
唐突に、金属を打ち鳴らすような電子音声が響きわたる。1R目の終了を知らせるゴングが、クラナの寸前まで迫っていたスティングレイを、ぎりぎりのところで止めていた。

「[ここで第一ラウンドは終了―!!]」
「っ……」
「…………」
その声と共に正気に戻ったように、目の前のクレヴァーが少し惜しそうな顔をしたあと、静かに消える。少し離れた位置にいた彼がリング端へと歩いていくのを確認してから、クラナは立ち上がりノーヴェ達の待つコーナーに向かって歩き出した。

────

「やあ、お疲れ様」
「あ、は、はい」
戻ってきたクレヴァーに、アドルフは大らかに笑いながらねぎらいの言葉を送る。それを合図にしたように、クレヴァーの中から引き締めたような緊張から来る険が少し取れた。コーナーに浮遊椅子に座りこむと、クレヴァーは回復魔法を受ける、と言っても……

「殆どダメージはないようだ。お見事というべきかな?」
「い、いえ……その、ずっと、逃げている、だけですから……」
「なに、それも立派な戦術さ」
「あ、ありがとう、ございます」
礼を言いながら、クレヴァーは少し困ったように頬を掻く。実際の所、自分がダメージをまともに受けるときがあるとしたら、それはほぼほぼ敗北する時と同義だろう。近接格闘術を極めたクラナ相手に、正面からの殴り合いをすることなど、自分の肉体では絶対にできないからだ。

「(このまま、一撃ももらわずに勝つ……)」
出来るなら、このインターバルを迎えることなく、先ほどの一撃で勝負を決めておきたかった。最後に射撃を行う前の、わざと自分の出来ない動きをさせて完全に幻影に見せかけた幻影のスティングレイ、あれを回避されると思っていなかった。自分がファンフェストと名付けた部分実態化の幻術を、初見で避けられるのは完全に予想外だ。あれが当たっていたなら倒すことが出来たのに……だが起きてしまったことは仕方がない。問題は、回復した彼を、どう完封するかだ。
実際、ここまでは完封で来ている。この時間で何らかの対策を講じてくる可能性もあるが、それらも全て読み切って見せる。

「(勝つのは……僕だ)」

────

「幻術か、いきなりお前が苦手なタイプに当たったな」
「まぁ、その内当たるとは思ってましたけど」
予想よりも、それが早かったのは事実だ。ただ決して油断していたわけではない、仮に幻術を使われたとしても、加速を使えれば対応できる算段は付いていた。しかし……

「加速封じか……」
「ちょっと予想外でした」
「あのなぁ、笑ってる場合か!」
苦笑しながらそんなことを言って頬を掻くクラナに、ノーヴェが危機感を持てと言った風な顔をして忠言する。

「術式その物に手を出されて、加速無しどころか使えば逆手に取られる、大ピンチも良いとこ
[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ