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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百二十四話 キュンメル事件(その2)
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そしてフロイライン・マリーンドルフは絶望を、司令長官は先程から冷たい笑みを浮かべたままだ。一体どんな因縁が両者の間に有るのだ。

「私の両親を殺したのはキュンメル男爵、卿なのですよ」
司令長官の言葉に驚いてヴァレリーと顔を見合わせた。彼女も驚愕している。ミュッケンベルガー元帥父娘も驚愕を顔に浮かべている。フロイライン・マリーンドルフを見た、彼女は顔に諦観を浮かべ、眼を閉じている。本当なのか?

「馬鹿な、何を言っているのです。あれはヴァルデック男爵家、コルヴィッツ子爵家、ハイルマン子爵家の仕業でしょう。大体この私にできるわけが無い、そうでしょう、ヒルダ姉さん?」
「……」

「姉さん?」
キュンメル男爵は呆れたような声を出したがフロイライン・マリーンドルフの様子に改めて不安そうな声で問いかけた。

「キュンメル男爵、卿は何も知らない。私の父はキュンメル男爵家を守るために男爵家の顧問弁護士をしていたのですよ」
「……」

「病弱で幼少の当主を持つキュンメル家など、財産を横領しようと思えば簡単なことだった」
「馬鹿な、伯父上はそのような方ではない」
キュンメル男爵の吐き出すように出された言葉に司令長官は薄く笑った。

「マリーンドルフ伯のことじゃ有りません、カストロプ公の事です」
「カストロプ公!」
何人かの口から同じ言葉が出た。カストロプ公、貪欲で狡猾、不正に身を染め最後は事故死、謀殺されたといわれている。そして息子は反乱を起した……。

「キュンメル男爵家の財産横領を狙ったカストロプ公にとって私の父は邪魔だった。だからリメス男爵家の相続争いに見せかけて殺したんです。そうでしょう、フロイライン」

司令長官の言葉に皆がフロイライン・マリーンドルフを見た。彼女は蒼白になっている。そして虚ろな表情で呟いた。
「御願い、ハインリッヒ、もう止めて。貴方はこんな事をしてはいけないの」

司令長官の問いかけには答えていない。しかし彼女の言葉は司令長官の言葉が真実である事を表していた。キュンメル男爵にもそれは分かったのだろう。額から汗が流れ元々血色の悪い顔がさらに青褪めている。

「そのスイッチを押しなさい、男爵」
「!」
司令長官だった。優しく微笑みながら男爵にスイッチを押す事を薦めている。

「ヴァルハラに行って大声で自慢すれば良い、ヴァレンシュタインを殺したと。内乱で死んだ貴族達が褒めてくれますよ。良くやった、男爵こそ門閥貴族の誇りだとね……。そして先代のキュンメル男爵に報告しなさい」
「報告……」

震える声で呟く男爵に司令長官が頷いた。
「父上、私は役立たずじゃ有りません。ヴァレンシュタイン家の人間は皆、私が殺しました。この通り皆が褒めてくれます。私は門閥貴族の誇りなのですと。良くやったと喜
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