暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
OVA
〜暗躍と進撃の円舞〜
男は辛いよ
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しいよ。そろそろ公安も悲鳴をあげてきてるってさ」
ずず、とストローがカップの底を虚しくすする音が、雑踏の中に消えていく。
空っぽになったそれを軽く振った後、中に残っていた氷の口の中に押し込めながら、金髪のツンツン頭は先を促す。
「毎年恒例の行事をこのタイミングで前倒しにするんだから、十中八九
海外
(
そと
)
への圧力だろうね。いよいよ
防衛省
(
市ヶ谷
)
も巻き込まれてきたってことさ」
「なんてったって、小日向相馬自身の出身国ッスからねー。アメさんを除いて、彼が肩入れしているめぼしい先進国がEU圏のみとはいえ、疑いの眼が向けられるのは当然スね」
協力なんてされてねーのに、可哀そうなこって。
大粒の氷をガリガリさせながら、金髪のスプリガンは空のカップを適当に放り投げる。
飲料アイテムとしての耐久値が切れた木製コップは、通りの石畳の上に落下するより早く、ガラスの欠片のようなポリゴンとなって千々に割れ散った。その様子を目で追っていた黒髪のウンディーネは、穏やかに言葉を続ける。
「……
英国
(
イギリス
)
はまだ突っぱねる気かな」
「閣下によれば、女王自ら反対みたいッスから当分はそうなるっしょ。とはいえ、
特殊空挺部隊
(
SAS
)
だか
秘密情報部
(
SIS
)
だかから猛烈にプッシュされてるらしいから、英国内もあっぷあっぷって聞くッスけど」
「あちらも混乱、こちらも混乱、か」
「核っつー絶対的な抑止力が、その効力を失ってきてるッスからねー」
厄介なのは、核そのものの威力は下がっていないということだ、と言い、黒髪の男は眼を剣呑に細める。
「核を持っている国が強く、持っていない国は持っている国の庇護下にある。そうやって戦後の平和は保たれてきた。だが小日向相馬が現れ、先進国に技術革新をバラ撒いている今、その常識は通用しない」
「なまじその技術が軍事に関連するからか、その兵器群は秘匿される。そして秘匿されるが故に、核兵器との力の《差》も不明瞭なままに勝ち誇っているっつー悪循環ッス」
具体的な既存最恐兵器との破壊力の差は関係ない。
本当の大問題は、核に対抗しうる
で
(
・
)
あ
(
・
)
ろ
(
・
)
う
(
・
)
兵器群を手中に収め、大国同士が互いを穿った視点で見ているということだ。
「今にして思えば、ウランとかプルトニウムとかの内臓グラム単位で威力を比べてた方がよっぽど単純だったんだろうね」
「明確な違いの基準点がない混沌っつーのは厄介ッスよ〜?どっちも自分トコのヤツが強いって言っとけばいいんスから。ンなの、ガキのマンガ主人公の強さ比べと同じくらい不毛なのにね」
まったくだ、と軽く肩を揺すった黒髪のウンディーネは、しかし顔を引き締め直す。
「ウィル……君は、これから世界がどうなると思う?」
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