巻ノ六十九 前田慶次その十二
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「大坂に残る」
「では内府殿も」
「あの御仁もな、もっとも内府殿はな」
「ご本人としては」
「江戸におられたいであろう」
自身の領地にというのだ。
「移って間もない」
「それ故に」
「ご領地を治めたいであろう」
「やはりそうですな」
「しかしあの御仁もじゃ」
「大坂におられ」
「天下の政をされておる」
その家康もというのだ。
「わしと共にな」
「では何かあれば」
「大坂に来るのじゃ」
まさにそこにというのだ。
「よいな」
「わかり申した」
「さて、ではわしは用が終われば大坂に戻る」
前田は穏やかな顔に戻り幸村に言った。
「また何かあれば都にも上がる」
「そしてその時は」
「また話そうぞ」
「はい、それでは」
こうした話をしてだった、前田は実際に彼の務めを行いそのうえで大坂に戻った。そしてそのうえでだった。
幸村はあらためてだ、十勇士達に話した。
「東国の徳川殿じゃが」
「はい、あの方ですな」
「これまでも見ていましたが」
「あの方をですか」
「これからも」
「見てもらいたい」
こう言うのだった。
「やはり気になった」
「東国のことが」
「また、ですな」
「あの方のことも」
「気になる」
だからというのだ。
「妙にな、そして徳川家といえば」
「はい、伊賀と甲賀」
「この二つの忍が存在しています」
「だからですな」
「その忍達には注意せよ」
「そうだというのですな」
「そうじゃ、あまり見ておると命を奪われぬまでも」
例えそうでもというのだ。
「咎められるからな」
「そうなっては厄介ですし」
「出来る限りですな」
「怪しまれぬ様に」
「見に行けと」
「そうじゃ」
まさにというのだ。
「前田殿とのお話から少しな」
「気になり」
「そして、ですか」
「徳川家のことを知りたくなった」
「そうなのですな」
「何か気になる」
幸村は勘からそう動いていた。
「まさかと思うが」
「天下第一の大名ですし」
「豊臣家は二百万石ですが徳川家は二百五十万石です」
禄の話も出た。
「豊臣家は金山や貿易も持っていますが」
「石高は徳川家の方が上です」
「そのこともありますし」
「若し徳川家が動けば」
「その時は」
「天下は乱れるかも知れぬからな」
それ故にというのだ、そしてだった。
幸村は十勇士達に東国特に徳川家の領地をこれまで以上に見る様に命じた、そしてそのことを話して実際にだった。
幸村は都においてだ、天下の情勢を見ていた。今は穏やかな天下を。
巻ノ六十九 完
2016・8・13
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