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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百二十三話 キュンメル事件(その1)
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にはゼッフル粒子が充満しているそうです。起爆装置はキュンメル男爵が持っています』

やっぱりそうか……。傍にいるヴァレリーが息を呑むのが分かった。
「それで、キュンメル男爵は何を望んでいるのです」
『元帥閣下に会いたい、此処に来ていただきたいと……』

ヒルダの背後から“来てはいかん”、“来ないでください”と叫ぶミュッケンベルガー元帥とユスティーナの声が聞こえる。やれやれだ、あの二人を見殺しにはできない。内乱を生き延びたと思ったが、今日が命日になるかな。

「分かりました、これからそちらに向かいます。男爵にそう伝えてください」
『閣下……』
「フロイラインが気にすることではありません。ココアを用意してください、直ぐ行きます」

通信を切るとヴァレリーが血相を変えて詰め寄ってきた。
「行ってはいけません、相手は元帥を殺すつもりです」
「だからと言ってミュッケンベルガー元帥とユスティーナを見殺しにする事は出来ませんよ、大佐」
私の言葉にヴァレリーは唇を噛んだ。

「ですが……、危険です」
「そうですね、でも考えを変えるつもりは有りません」
そんな唇を噛み締めてこっちを睨むなよ、ヴァレリー。美人が台無しだ、男が近付かなくなるぞ。

「分かりました。私もご一緒します」
「大佐」
「この件については私も考えを改めるつもりは有りません」
「……」

「キスリング少将に知らせますか?」
俺が頷くとヴァレリーは自分の机で憲兵隊本部に連絡を取り始めた。それを見ながら俺もアンスバッハに連絡を入れた。地球教が絡んでいるのは間違いない、こいつは帝国広域捜査局の出番だ。

『元帥閣下、どうされました』
「厄介な事が起きました」
『と言いますと』

「ミュッケンベルガー元帥とユスティーナがキュンメル男爵邸で人質になりました」
『人質?』
アンスバッハは訝しそうな表情をしている。キュンメル男爵邸で人質と言う事がピンと来なかったのだろう。

「犯人はキュンメル男爵です。彼の屋敷の地下はゼッフル粒子で充満しているそうです」
『!』
たちまちアンスバッハの顔が緊張に包まれた。

『閣下、キュンメル男爵の要求は?』
「私に来て欲しいと言っています」
『閣下! 行ってはなりません。今閣下を失えば帝国は……』
「そうは言っても、あの二人を見殺しには出来ません」
『閣下!』
そう騒ぐな、アンスバッハ。冷静沈着なお前らしくない。

「そんな事より、大事な事が有ります。知っているかと思いますが、キュンメル男爵は病弱で動く事さえ儘なら無い。つまり彼一人で出来ることではありません。協力者が居るはずです」
俺の言葉にアンスバッハはゆっくりと頷いた。

『なるほど、閣下は例の連中が協力者かも知れないと考えているの
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