巻ノ六十九 前田慶次その四
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「御主達も来るか」
「はい、そのうえで」
「我等全員で前田慶次殿に会いに行きましょう」
「あの御仁はよく遊郭におられるとか」
「そこで日々遊んでおられるとのことですから」
「ではな」
ここまで話してだ、そしてだった。
幸村は十勇士達を連れてその上で遊郭に向かった、都の遊郭はこの時もかなりの賑わいを見せていた。そこに入り。
慶次のいる店は何処か聞いているとだ、上から声がした。
「わしを探しているか」
「その声は」
「上から失礼する」
一行のすぐ左にある遊郭の店の二階からだ、黒髪を荒々しく髷にした太い眉を持つ彫のある顔の男が出て来た、手には異様に大きな煙管がある。
「わしが前田慶次だ」
「そうでござるか、貴殿が」
「真田源次郎幸村殿か」
慶次は自分から幸村の名を問うた。
「そうであるか」
「如何にも」
幸村は下から慶次を見上げて答えた。
「それがし真田幸村と申す」
「その後ろに控えるのは十勇士」
慶次は彼等も見て言った。
「天下無双の豪傑達か」
「むう、会ったばかりというのに」
「もう我等のことを言ってくるとは」
「既にご存知か」
「そうなのか」
「噂は聞いている、都にまたとない豪の者達がいると」
やはり笑って言う慶次だった。
「貴殿達か、しかし」
「しかし?」
「しかしとは」
「上からこうして話すのは非礼」
慶次はまたこのことについて言った。
「そしてわしを探しておるのはわしに用があってのこと」
「その通りでござる」
幸村が慶次に答えた。
「それで参上した次第」
「では来られよ」
「この店の二階まで」
「酒でも飲みながら」
「さすれば」
「御主達も来るのだ」
慶次は十勇士達にも声をかけた。
「そして話をしよう」
「我等もか」
「我等もそうしてよいのか」
「殿だけでなく」
「我等十人も」
「ははは、遠慮はいらぬ」
慶次は十勇士達にも笑って答えた、全体的にざっくばらんで豪放だ。そこは彼の叔父である前田を思わせた。
「酒は大勢で飲む方がよい」
「それでは」
「お言葉に甘えて」
「そのうえで」
「これより」
「さあ、来られよ」
また笑顔で言う慶次だった。
「酒を飲みつつ話をしようぞ」
「それでは」
こうしてだった、幸村主従は店に入りそこの二階に上がり慶次と話をすることになった。慶次は二階の十六畳はある広い部屋で派手な色の着物の遊女二人を横に置いていた。
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